90日のシンデレラ
 「営業関係だって大事なことだよ。商品が売れなければ、社が継続できないんだし」
 チラッと真紘が覚えている限り、営業部門の大村のエントリー内容は販売促進の改善案だった。女性営業員なんて数が少ないだろうから、その彼女の提案は貴重なもののはずと真紘は思っていた。

 「でも落ちちゃったのは、視野が狭いからなんだろうな~。営業エリア内だけでなく、全社レベルで提案すればよかったのかな~。でも予算を考えると……」
 落選はしたものの、大村は大村でひとり反省会を繰り広げていた。

 「はいはい。エントリー結果は残念だったけど、ここまで残ったことは素晴らしいことよ。記録には残っているから、どこかのタイミングで誰かがみる可能性はあります。そう失望することはないですよ。過去に別部門で復活した案件もあるし」
 と、マダム山形がやんわりと口を挟む。

 「まぁ、コンペですから。懲りずに別企画にして提案してみます! 山形さん、今日までありがとうございました。瑠樹さんに挨拶をしたいのですが、いつ戻られますか?」
 コンペ落選と同時に、この部屋へは入室ができなくなる。最後のこの機会に大村は瑠樹との対面を希望した。

 「瑠樹さん、昨日から海外出張に出ています。戻りは木曜日だけど、こちらには金曜日に入ります」
 土曜の夕方に瑠樹が真紘へ告げたのと同じことを、マダム山形が大村へ教える。

 それ、とっくに真紘が知ってることであれば、少し胸がドキドキする。
 そんな少しの罪悪感を持つ真紘とは違って、大村はただただ、がっかりするのみである。がっかりはするものの、そこは元気女史の大村だ、ただでは起きない。
 「あー、残念。最後にお顔を拝みたかったんだけど……メッセージ、いいですか?」
 「はい、お預かりします」
 大村の懇願に、ニコニコ顔でマダム山形は受け付けた。

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