90日のシンデレラ
 コンペ室出入り間もない頃、こんなふうに大村さんと一緒に退勤したなぁっと真紘は思い起こす。別れ道となる最寄り駅までの短い路上だったけど、真紘は社での瑠樹のことをいろいろ教えてもらった。

 そして今は、瑠樹についての情報は、真紘のほうが詳しいはず、多分。
 こうやって一緒に帰るのは、これがきっと最後になる。奇妙な逆転が起こっているなとも真紘は思う。
 だが、そんなこと、大村はひとかけらも知らない。コンペに落ちてしょんぼりもすれば、前向きにとらえて意気揚々ともなっている。元気女史大村は、逞しい。素敵な彼女の見習いたいところだ。

 「結果がさぁ~、個別通達だから、誰がどうなったってのはわかんないのよね~」
 「そうですね。個別に結果がくるなんて、就活みたいとも思っちゃった」
 選考会の当落は、通常のコンテスト結果みたいに一次予選通過者というリストがくるかと思ったらそうでなかった。社内コンペという外部に向けたイベントでもなければ、テーマも業務改善という内容でもある。オープンにしてしまうには、デリケートなところがあるのだろう。

 「最終結果は社内ホームページに出るんだけどさ、途中の過程はノーコメなんだよ。私はもうダメだったけど、堀江さんには残っていてほしいなって思う」
 「どうして堀江さんなんですか?」

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