90日のシンデレラ
 育休明けの堀江ママは、一時的に社から離れていた。現場から離れているから社内事情に疎くなりそうなのに、今回の業務改善コンペではエントリーを勝ち取っていた。その堀江ママを、大村は応援しているという。
 柔らかな雰囲気の堀江であるが、イメージとは裏腹で実は相当の実力者なのかと真紘は推測する。もしそうなら、本社社員、やはり優秀過ぎる。

 「んー、堀江さんって、育休戻りじゃない。その先輩ママが実績を残してくれれば、あとで育休を取る我々のロールモデルになるじゃない。女は育休から戻ってきても使えないってのを、堀江さんが吹き飛ばしてくれるといいなと思ってる。うちの社ってさぁ~、外ではダイバーシティとかジェンダ―フリーとかいっているけど、皆が皆、そういうわけではないからね~。一女性社員としては、そんな奴らにぎゃふんといわせたいってところ!」

 からからと、明るく大村はいう。
 大村は営業という女子には不利な部門で働いていれば、思うことがいろいろあるのだろう。それに大村のいうとおり、成功者が出ればそれに続きたいと思う女子社員が出てくるものだ。
 それと同時に、大村は結婚して子供ができても可能な限り仕事を続けたいのだとわかる。

 (意識がやっぱり、都会というか、本社だな~)
 (うちの社なんて……)

 あまり比べるのはよくないと思いつつも、田舎の我が社を振り返ってみる。
 真紘の社の場合、既婚女性は育休から戻ってくるのは半分足らず。戻ってきても名ばかりの役職がつけられて、ささやかな役職手当と引き換えに残業代はカット。実質、給料減額となる。ゆえに、既婚女性社員は家事を理由にとっとを定時で退社するのだ。
 これは、男性社員でも昇格には及び腰になる、小さな小さな孫会社の給与実態である。

 「堀江さんのテーマって、何でしたか?」
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