90日のシンデレラ
 「瑠樹さん、おかえりなさい。予定より早く会えて、嬉しいです」
 真紘はそっとふたりの体のすき間から両手を抜いて、瑠樹の両頬へそれを添える。

 「ただいま、真紘」
 柔らかく瑠樹の頭を引き寄せれば、瑠樹は真紘に深く、愛おしくくちづけたのだった。

 唇が、首筋を伝わって鎖骨へ到達する。触れるか触れないかのような羽根のような軽さで、肌を伝い歩きする。
 柔らかくて温かいその感触が、大事にされているようでもあれば擽ったい。

 真紘真紘と、うわごとのように少しかすれた声が自分の名を呼ぶ。呼ばれる度に、真紘の心臓が小さく跳ね上がる。
 求めてくれているのは、他の誰でもない自分だけ。瑠樹のカノジョである真紘だけ。ひどく嬉しい。

 唇だけでなく、大きな手も真紘を求める。パジャマ代わりのカットソーワンピースの上から、ゆっくりと体のラインをなぞる。ここに真紘の形があるのを確かめるかのように。
 肩口を撫でられると、ほっとする。大きな手の存在感に、自分は守られているのだと実感できる。
 わき腹からはじまって腰の括れがなぞられる。さっきまで腕が回されていたところなのに、あらためて丁寧に撫でられると、体の芯がぞくりとする。そんなところ、自分以外の手がめったに触れることはないから。

 さらに手のひらは尻の膨らみを揉み、その張りの良さを楽しんで、冒険をまだまだ続ける。膝小僧にたどり着き、指先はカットソーワンピースの裾を捕まえたのだった。

 「真紘、我慢できない」

 ひと言そう謝罪して、瑠樹はせっかちにワンピースの裾を頭のほうへ引き上げて、真紘からワンピースを抜き取ってしまう。さらにたったひとつ残されていたショーツも忘れずに。
 そろりそろりと全身を撫でられてうっとりしていていたところに、突然の余裕のないセリフを吐き瑠樹は荒々しい行動に出た。このカレシの豹変の様に、真紘は目が丸くなった。

< 192 / 268 >

この作品をシェア

pagetop