90日のシンデレラ
***
「こんにちは、調子はどうかしら?」
ある日の午後の研修室で、久しぶりの声が真紘の耳に入った。
事前配布された研修資料から顔を上げて声に向きなおれば、鎌田女史がそばに立っている。本日はパリッとしたオープンカラーのブラウスにタイトスカートという、スレンダーなプロポーションがますます引き立つ服装の彼女がいた。
「ご無沙汰しています。毎日が学ぶことばかりで大変ですが、充実した毎日です」
鎌田女史に答えたこのセリフ、これは嘘ではない。
実際、本社研修は真紘の知らないことばかりで、難しい。かといって、まったく興味がわかないわけでもない。講師陣が優秀なのだろう、レクチャーは続きがききたくなるものが多く、気がつけば終了時間というものばかりだ。
正直な話、この研修は真紘でなくやはり主任が受けるべき内容だと思う。それだけ濃い研修ということなのだが、ここは「こんないい研修を受けることができてラッキーだった」と前向きに考えることにしている。
「一応、私は椎名さんの担当なのに、株主総会の準備でほったらかしになって本当にすみません。でも、問題ないようね」
株主総会ときいて、真紘は気がついた。確かにそういう時期であった。真紘の田舎の会社では株式を公開していないからか、そのようなものはきいたことがない。ここは大きな会社であるのだと、再認識した。
「業務もそうだけど、社宅は大丈夫かしら? セキュリティは問題ない物件だけど、生活面で困ったことはない? もっと早く確認するべきことだったのだけど、新しい物件だから却って安心してしまってうっかりしていたのだけど……」
なんと、あの社宅で問題があれば相談できる体制であったらしい。
相談といっても、築浅の物件であれば水漏れや漏電の問題はないし、交通の便もいい。買い物だって近くで済ますことができる。困るようなことはないのだ。強いていえば、レンタル家具がマンションの格に比べて貧相ということぐらいだろうか。
「それも過分な配慮をいただいていまして、大丈夫です」
「こんにちは、調子はどうかしら?」
ある日の午後の研修室で、久しぶりの声が真紘の耳に入った。
事前配布された研修資料から顔を上げて声に向きなおれば、鎌田女史がそばに立っている。本日はパリッとしたオープンカラーのブラウスにタイトスカートという、スレンダーなプロポーションがますます引き立つ服装の彼女がいた。
「ご無沙汰しています。毎日が学ぶことばかりで大変ですが、充実した毎日です」
鎌田女史に答えたこのセリフ、これは嘘ではない。
実際、本社研修は真紘の知らないことばかりで、難しい。かといって、まったく興味がわかないわけでもない。講師陣が優秀なのだろう、レクチャーは続きがききたくなるものが多く、気がつけば終了時間というものばかりだ。
正直な話、この研修は真紘でなくやはり主任が受けるべき内容だと思う。それだけ濃い研修ということなのだが、ここは「こんないい研修を受けることができてラッキーだった」と前向きに考えることにしている。
「一応、私は椎名さんの担当なのに、株主総会の準備でほったらかしになって本当にすみません。でも、問題ないようね」
株主総会ときいて、真紘は気がついた。確かにそういう時期であった。真紘の田舎の会社では株式を公開していないからか、そのようなものはきいたことがない。ここは大きな会社であるのだと、再認識した。
「業務もそうだけど、社宅は大丈夫かしら? セキュリティは問題ない物件だけど、生活面で困ったことはない? もっと早く確認するべきことだったのだけど、新しい物件だから却って安心してしまってうっかりしていたのだけど……」
なんと、あの社宅で問題があれば相談できる体制であったらしい。
相談といっても、築浅の物件であれば水漏れや漏電の問題はないし、交通の便もいい。買い物だって近くで済ますことができる。困るようなことはないのだ。強いていえば、レンタル家具がマンションの格に比べて貧相ということぐらいだろうか。
「それも過分な配慮をいただいていまして、大丈夫です」