90日のシンデレラ
 「あれ? 青くない」

 いざ、例のブルーツリーの根元にたどり着き、下から見上げて思わず真紘は声が出てしまった。

 「どうした?」
 「いえ、ブルーツリーって、昼間は青くないんだと……」
 「ああ、あれはライトニングだから。七夕のイベントに合わせての演出だ」

 そう瑠樹は説明する。
 夜の高速道路からみたあのツリーの青色は、イルミネーションだろうと予想がついていた。でも、実物も葉や枝の色は青い色素の多い樹木に違いないと、なんとなく真紘は期待していたのだった。

 それに、あれは何メートルにもなる大きな大きな木だったと思ったら、実物は「まぁまぁ大きな木」である。ビルの谷間にあれば、ビルのガラスにブルーライトが反射して、実際より大きくみえたらしい。
 昼の姿を知って、夜の幻想から覚めた気分になったのだった。

 「思っていたのと違って、残念だった?」
 「う、うん。まぁ、ちょっと。でも、よく考えれば、そうよね。ここは東京だし。植樹するにも限界があると思う」
 「見方によって違う、の一例だな」

 見方によって違う――何と比較するか、どの位置から眺めるかで印象は変わる。
 それはごくごく当たり前のことだけど、うっかり忘れてしまうことでもある。

 「真紘、この上でモーニングにしようと思うけど、いい?」

 そういえば、不意打ちで起こされて、わざわざ電車を乗り継いでここまできた。朝食はグラス一杯のぶどうジュースだけで。
 瑠樹が急いだ理由は、モーニングの時間。早くいかないと席もなくなれば、タイムアウトになる。

 瑠樹に同意して、エレベーターに乗り込んだ。
< 210 / 268 >

この作品をシェア

pagetop