90日のシンデレラ
 朝食が運ばれてきた。それは、ごくごく普通のプレートだ。
 メインはシナモントースト、サイドディッシュはミニサラダとカットフルーツののったヨーグルト。もちろん、トーストの横にはカリカリベーコンとふんわりスクランブルエッグもある。ドリンクはアイスコーヒー、グラスに当たる氷の音が涼やかだ。

 それを美味しそうに瑠樹は食べる。その姿、ごくごく普通の朝食を食べる人だ。
 イケメンというだけでも、瑠樹にはアドバンテージがある。その上に、彼にはスーパーエリートなビジネスマンの顔がある。こうやって食事をする分には、一般人と変わりないのだけど。

 「ということで、諸々の時間を逆算すると、真紘とは昼前にはお別れしなくてはならない」

 瑠樹のデッドラインを告げる声で、真紘は我に返った。

 「今度埋め合わせをするから、今日はこれで勘弁してくれる?」

 もともと会えないとわかっていたのに、思わぬハプニングが起こって朝食をともにすることができた。それだけでも充分なのに、瑠樹は埋め合わせを約束する。

 「そんな、埋め合わせだなんて……ありがとうございます。私、溜まっている家事があるから、瑠樹さんはお兄さんと楽しんできてください」

 少々強引なところがあるかもしれないけど、瑠樹は自分のことを大事にしてくれている。空いた時間を真紘に充てて、さらに足りない分を『埋め合わせ』するという。自分にはもったいないくらいの、素敵なカレシだ。

(私にできることは、何だろう?)

 瑠樹に大事にされればされるほど、ちくりと罪悪感みたいなものが胸を刺す。その瑠樹に相応しくあるように自分も頑張らなくてはと、真紘は気持ちが引き締まるのであった。




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