90日のシンデレラ
 (どうしようかな?)
 (プライベートで会っているから、今更な感じだけど……)
 (でもそれは、ふたりだけの秘密だし)

 少し悩んで、真紘は
 「では、お願いします」
 と、メッセージを預けることにした。
 マダム山形はふたりのことを知らない。大村と同じことをしておくのが無難である。

 ――今までご指導をありがとうございました。地元に戻っても、ここで得た知識を活用して業務に励みます。

 カードの文面は、面と向かっていうには照れくさい言葉だ。これって、いい伝達手段かもしれないと真紘は再認する。
 マダム山形へ手渡せば、彼女もにっこりして真紘のことをコンペ室から送り出したのだった。




 本人からスケジュールを知らされていないけど、マダム山形のセリフで真紘は今週の瑠樹は木曜まで出社しないということを知った。
 土曜日の段階では未定でも、業務開始となる月曜日までには固まるものなのだろう。スケジュールが決まっても真紘との時間が取れないのだ、会えない予定をわざわざ伝えることはない。
 スケジュールが知らされていない理由はそういうことと軽く真紘は思い、明日からの研修まとめについて頭を切り替えた。

 すっかり習慣となった夕方のスーパーで夕食を買い、借り上げ社宅に戻る。
 夏の宵となれば、日没後であっても完全な暗闇ではない。でもひとり暮らしであれば、明かりをつけて待つ人はいない。
 自分で明かりをつけて、まず夕食を食べた。ノートPCを開いて課題まとめの続きをし、休憩がてらに風呂に入ろうとした。

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