90日のシンデレラ
 洗面所へいけば、使った覚えのないバスタオルが洗濯機に突っ込まれている。

 (あれ? きてたの?)
 (社では会わなかったから、出張の途中に寄っただけなのかな?)

 瑠樹が着替えだけして去っていくことは、少なくない。今日もその日だったのだろう。マダム山形からきいていたスケジュールとは、ちょっと違うような気がしたが、真紘は特に気にならなかった。

 入浴を終えて、ひと息つく。風呂上りに喉が渇き、何か飲もうとした。
 冷蔵庫を覗けば、中途半端に残っている野菜ジュースがある。他にはミネラルウォーターがあり、迷わずそれへ手を伸ばす。
 湯上りに飲む冷えた水はとても美味しい。喉が潤ってしまえば、あることに真紘は気がついた。

 (あれ?)
 (何も入ってなかった)

 瑠樹はこの部屋を訪れるたびに、いつも何かを持ってくる。有名パン屋の食パンだったり、高級食材店のフルーツジュースだったり、はてさては添削した真紘のレポートだったり。
 でも今日は、何も残されていない。使用済みのバスタオルがあるのみだ。

 (…………)
 (ま、忙しいっていっていたし、買い物する時間がなかったのだろう)
 (それより、レポート!)

 小さな疑問が湧いてきたが、とりあえず棚上げにする。真紘としては木曜日までにまとめのストラクチャーを組んでおきたい。それが決まれば、関連資料探しがはじまる。これは社内でないとできないから、どうしても木曜日までにそこまで済ませたい。
 企画開発研修以外のことをすべて、真紘はシャットアウトしたのだった。



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