90日のシンデレラ
 課長の要領の悪さは有名だったが、彼の下で働いて真紘は気がついた。彼は要領が悪いというより、締め切りぎりぎりまで仕事を放置する癖があると。
 これは単純に、怠け者といっていいのでは? それに変更を嫌う性格でもあった。要は、「廻っていればそれでいい」という事なかれ主義だったのである。

 そんな課長が、真紘の業務改善案を受け取った。第一声が「めんどくさい」といいそうなのに、意外であった。
 考えて行動して、事態がいい方向へ変わろうとしてる――明るい展望がみえたようで、真紘はすがすがしい気分になる。

 「ああ、椎名さん、今度……」

 去ろうとした真紘へ向かって、次の業務、またもや遅れ気味のものだ、を課長は割り当てたのだった。



 †††



 真紘が孫会社に復帰して、一ヶ月経った。
 主任が消えてちょうど二ヶ月になる。社のほうでは主任の代わりの中途採用の募集をかけているけれど、応募者はこない。次が決まらないので、あの課長がずっと主任代行を務めていた。

 ある日の退勤時のことである。事務部門の同僚と社員専用駐車場まで一緒に帰る途中で、こんなことをきかされた。

 「椎名さん、あなた、次の人事で昇格しそうよ」
 「それはないでしょ! うちの会社、産後戻ってきた社員しか役付きにならないはずだよ」
 「今までそうだったけど、椎名さんは本社研修にいったじゃない。だから会社にすれば、『金を出してやったんだから、退職なんて認めない』って感じらしいよ」

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