90日のシンデレラ
ここぞという理由は……今のところ、ない。真紘の家族は皆、健康状態が良好で、真紘だって元気だ。
捻りだせそうな理由としては『結婚』だろう。ある意味、ここは田舎だから相手方の希望だといえば『寿退社』が認められるような地区だ。
「…………」
真紘に、カレシはいない。現時点では。そうなれば、結婚という退職理由は使えない。
「…………」
結婚という思い付きに、真紘は虚しくなる。ほんの数ヶ月前にはカレシがいた。お付き合いの段階では結婚なんて意識したことなかったし、ただただ一緒に過ごす時間が楽しかったというものだけど。
「…………」
考えれば考えるほど、自分は社から雁字搦めにされていて、どうにも逃れないという未来図しかみえてこない。
瑠樹とモーニングを食べてからこっち、どうも真紘の生活は尻すぼみなことばかり。瑠樹が去ることで、真紘の運も一緒に去ってしまったようだ。
ふと、瑠樹との思い出と合わせて、真紘はワンピースのことを思い出した。
引っ越しの荷物は、大部分を処分してきた。でも一部は持ち帰っている。研修で使った資料と、あの赤のワンピースだ。
そうそれは、瑠樹がくれたワンピース。振られて悲しかったけれど、赤珊瑚のピアスとサンダルも処分することはできなかった。
瑠樹は自分の痕跡をすべて消し去って、真紘の前から消えていった。瑠樹にかんするもので消えなかったものは、この三つだけ。プレゼントだったので、真紘の管理下にあったからだ。
実家に持ち帰ってはいるが、それを取り出して身に付けることはしない。キャリーバッグの中に、しまい込んだままである。
なんとなく、家族の目に入るのが嫌だった。もちろん、瑠樹とのことは誰にも話したりはしていない。
「…………」
今さら本社でのことを懐かしんでも、現実は変わらない。フラれたカレシに未練たらたらなのはみっともないかもしれないが、瑠樹のことをそう簡単に思い出へと昇華することはできない。
田舎に戻っても東京の思い出の品が心の支えになればと思ったが、こうも明日の展望が明るくなさ過ぎればその効果も期待できない。
いつまでも駐車場にいても仕方がない、ひと晩寝れば何か閃くかもしれない。そう思い、真紘はエンジンをかけた。
捻りだせそうな理由としては『結婚』だろう。ある意味、ここは田舎だから相手方の希望だといえば『寿退社』が認められるような地区だ。
「…………」
真紘に、カレシはいない。現時点では。そうなれば、結婚という退職理由は使えない。
「…………」
結婚という思い付きに、真紘は虚しくなる。ほんの数ヶ月前にはカレシがいた。お付き合いの段階では結婚なんて意識したことなかったし、ただただ一緒に過ごす時間が楽しかったというものだけど。
「…………」
考えれば考えるほど、自分は社から雁字搦めにされていて、どうにも逃れないという未来図しかみえてこない。
瑠樹とモーニングを食べてからこっち、どうも真紘の生活は尻すぼみなことばかり。瑠樹が去ることで、真紘の運も一緒に去ってしまったようだ。
ふと、瑠樹との思い出と合わせて、真紘はワンピースのことを思い出した。
引っ越しの荷物は、大部分を処分してきた。でも一部は持ち帰っている。研修で使った資料と、あの赤のワンピースだ。
そうそれは、瑠樹がくれたワンピース。振られて悲しかったけれど、赤珊瑚のピアスとサンダルも処分することはできなかった。
瑠樹は自分の痕跡をすべて消し去って、真紘の前から消えていった。瑠樹にかんするもので消えなかったものは、この三つだけ。プレゼントだったので、真紘の管理下にあったからだ。
実家に持ち帰ってはいるが、それを取り出して身に付けることはしない。キャリーバッグの中に、しまい込んだままである。
なんとなく、家族の目に入るのが嫌だった。もちろん、瑠樹とのことは誰にも話したりはしていない。
「…………」
今さら本社でのことを懐かしんでも、現実は変わらない。フラれたカレシに未練たらたらなのはみっともないかもしれないが、瑠樹のことをそう簡単に思い出へと昇華することはできない。
田舎に戻っても東京の思い出の品が心の支えになればと思ったが、こうも明日の展望が明るくなさ過ぎればその効果も期待できない。
いつまでも駐車場にいても仕方がない、ひと晩寝れば何か閃くかもしれない。そう思い、真紘はエンジンをかけた。