90日のシンデレラ
 †††


 実家は古い住宅街の中の一軒家で、真紘の駐車場は自宅敷地内にはない。車は一家に一台の時代の団地であれば駐車スペースは一台で、父がそこを使っておしまいになる。他の家族は近隣の駐車場を借りていた。
 徒歩五分ほどのところの月極駐車場に車をとめて、真紘は自宅目指して歩いていった。

 「?」

 家族以外の車が、家の前に停まっていた。父の車が駐車スペースに収まっていて、仕方なく立派なクーペが路駐をしている。明らかに、予定外の訪問客がきているとわかる。
 クーペはパールホワイトで、金属的な光沢が美しい。この田舎にひどく不釣り合いだと思えば、そのナンバープレートは東京である。

 ナンバーをみて、え? と真紘は思う。
 これととてもよく似た車を知っている。でもそれが、ここにあることはあり得ない。
 でも目の前のこの車のことを、どう説明すればいいのか?

 この時間に、来客者がきている。しかも遠方の客人が。
 輝くスポーツセダンをみて硬直する真紘に、スマートフォンが揺れて、その縛りを破る。条件反射で鞄からスマートフォンを取り出せば、母親からの電話であった。

 ――真紘、まだ会社? 真紘にお客さんがきているから、早く帰ってきて。
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