90日のシンデレラ
 街の明かりが、車窓を流れていく。ここは真紘の住む田舎の町だから、その考量は乏しい。この助手席から東京の眩い夜景を観賞したのだが、それは何カ月前のことだっただろうか?

 出発してからしばらくは膝の上のスマートフォンから父の声がきこえていた。だが真紘が一向に返事をしないから、あきらめたのか向こうのほうから切れた。
 一応、東京へいくと真紘は告げたのだが、もちろん親は納得していないと思う。
 切れちゃったという真紘のつぶやきに、小さく瑠樹は笑う。
 やがてクーペは市街地を抜けて、高速道路に乗った。

 「本当に、東京までいくの」

 勢いで東京にいくと告げて、このクーペに乗ってしまった。直前まで課長補佐の内示を受けて嫌で嫌で仕方がなかったこともあって、そこから逃げ出したい願望も真紘を後押ししていた。
 でも、いざクーペに乗って時間が経てば、いろいろと目が覚めてくる。
 果たしてこのままでいいのか? 現状を理解する上で、訊きたいことがたくさんある。

 「そのつもりだけど。ひと晩走れば着く。安心して、真紘が働いている間に仮眠を取ってあるから」
 何でもないように、瑠樹が告げる。その平然としたところ、真紘をクーペに乗せたときと変わらない。

 (いや、訊きたいのは、それじゃないんだけど!)
 (どうして、この人はこうなのかしら? いきなり現れて、突拍子もないことをいう)
 (エレベーターのときと、同じじゃない!)

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