90日のシンデレラ
 「その提案ですが、人員再配置と業務のスリム化です。役員の人件費が会社規模にあっていませんでしたので、ちょっと相場に合わせてもらい、浮いた分を研究開発費に使っていただくようにと。できないようであれば、近隣の子会社に取引商品の関連部門だけ吸収合併させる検討が、本社サイドで必要になるかと思います」

 柔らかな表情で、マダム山形がそう締めくくった。
 隣できいている茉莉は「恐ろしいな」と思う。マダム山形の口調こそ穏やかだが、セリフのすべてが強制リストラで強制事業再編でしかない。

 (開発者本人を追い出して利益を独占していたような幹部が、そんな自分の身を切る改革できるのだろうか?)
 (多分、無理だろうな~)
 (製造部門だけ子会社にまとめて、終わりかな? どっちみち椎名さんがいなくて瑠樹さんが介入することがなかったとしても、うちが取引を終了した段階で売り上げがなくなるから、やっぱり潰れちゃいそう)

 なまじ自分が真紘のレポートを瑠樹にみせたのがきっかけで、孫会社とはいえひとつの会社の社内改革にまで事が発展した。どこで流れが変わるのかなんて、わからないもの。そう茉莉は思う。

 「外部がいくらアドバイスしても、内部によくしようという気持ちがないと無駄ですから。ただ今回、椎名さんをヘッドハンティングしたようなことになっているので、その対価としての経営コンサルトです。これで充分かと思います。あ、そうそう……」

 思い出したように、マダム山形は付け足した。

 「椎名さん、元会社に戻ってから、うちでの企画開発研修を生かしてクラウド活用の提案をしていました。嬉しいですよね、早速本社研修を実践してくれたのですから。コネ上司のデスクにあるのを、私、見つけてきたから、今回の提案書の中にそれも付け加えておきました。叶うかどうかは未知ですが」

 課長が放置してあった真紘の提案書は、マダム山形の手によって日の目を浴びることになったのであった。


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