90日のシンデレラ
 時間がやってきて、茉莉と山形はお暇する。女三人、皆が瑠樹の周りにいるメンバーであれば、彼と真紘のことで盛り上がっても良さそうなのだが、そうならなかった。良子の夫、誠二会長が帰宅したからだ。
 たくさん残っているテーブルのパティスリーをみて、茉莉は思う。やっぱり、会長の分が交ざっていたのねと。

 「まぁ、今回、丸く収まってよかったわ」
 「そうですね。ずっと奥様、瑠樹さんのことを気に病んでいたし」

 茉莉としては、自分が瑠樹の結婚相手の筆頭にあげられているのを知っていた。社では公私混同されることはなかったが、オフになるとそれとなく瑠樹とのことを詮索されていた。

 「私としては、鎌田さ、あ、違う、橋本さんが根負けして瑠樹さんと結婚するかと思っていたけど、わからないものね~」
 「山形さん、鎌田でいいですよ。社では旧姓を使いますので。あまりいうのも何なんですが、私、瑠樹さんとは絶対に結婚したくなかったのです。瑠樹さんのほうも、そうだったはず」
 「え? そうなの?」
 「はい。お互い、絶対に嫌だったんです」

 茉莉には将来を誓い合った人がいる。ただ、先方の都合で、結婚が延び延びになっていた。結婚が具体的に決まらないからそれを公言できず、そのせいで周囲には曖昧な態度となって映っていた。
 茉莉としては、早く瑠樹に結婚相手を決めてほしい。でないと、会長夫人のひと声で外堀が埋められてしまいそう。瑠樹への要望は、ただそれだけである。

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