90日のシンデレラ
 そんな中、企画開発新人研修と業務改善コンペが同時にスタートした。
 その準備途中で引っかかったのが、孫会社の真紘である。最初に真紘のレポートを見つけたのは、茉莉だった。だいたいが本社に忖度するようなものが多い中で、真紘のレポートは異質だったのである。

 これを瑠樹にみせたのは、単なる好奇心から。はじめは「こんな面白いレポートがあったわよ」ぐらいでだった。
 ところが、瑠樹はこれに食らいつく。こんな瑠樹の反応、長らく一緒に仕事をしていてはじめて茉莉がみた瞬間だった。

 (最初は男だと勘違いしていたから、面白くって、そのままにしてあったんだよね~)
 (そうしたらさ、女だってわかったときの瑠樹の顔、あれも見ものだった)
 (それで終わりかと思えば……)

 茉莉の予想に反して、終わらなかったのである。
 真紘のことを男でないと知ってから、瑠樹はもう真紘に興味津々だ。研修初日に実際に真紘の姿を確認したあと、瑠樹は茉莉にいったのだった。

 ――おい、カマリ。シーナはどこに住むんだ?

 自分が押さえてある社宅だというと、鍵を寄こせという。
 それは、いろんな意味でできないと茉莉が拒絶すると、こう条件を付けてきた。

 ――シーナの同意を得られたら、いいか?

 そういわれて、茉莉は悩んでしまった。
 大人の男女の間に総務部がどうこう言う権利はない。ただあれは、近い将来茉莉が使う部屋としてキープしている物件だ。総務部には過分な計らいをしてもらっているのに、その総務部に内緒で勝手なことことはできない。
 なかなか「うん」といわない茉莉に向って、瑠樹はダメ押しした。

 ――カマリ、お前は俺と結婚したくないんだろ。俺だって、お前とだけはまっぴらごめんだ。この意味がわかっているなら、協力しろ!

 茉莉の痛いところをついてきたのだった。

< 265 / 268 >

この作品をシェア

pagetop