90日のシンデレラ
借り上げ社宅引き渡しの日、茉莉は真紘から鍵を返却してもらった。真紘は平然を装っているが、それは空元気とわかる。
この段階で瑠樹がいろいろ動いていることは知っていたが、この真紘の元気のなさから何も知らされていないんだなともわかる。かといって、こちらから彼女に告げることはできない。
瑠樹さんが迎えにいくから、頑張って待っていて――そう思いながら、茉莉は真紘と別れたのだった。
「御曹司と結婚なんて、シンデレラストーリーでしかないと思うのだけど、遠慮する人はいるのね」
茉莉が瑠樹との結婚を嫌がるのが不思議でたまらないと、マダム山形は疑問を呈す。
「そこなんですけど、椎名さん、瑠樹さんが北峰グループの御曹司で、総務部と兼任で子会社副社長であるということ、知らなかったんですよね」
「え、そうなの!」
「ええ」
「名前が『北峰』で、ピンときそうなのに」
「そういうところがのん気というか、大らかというか。瑠樹さんが東京に連れて帰ってきて、はじめて知ったみたいです」
いつ椎名さんを迎えにいくのかしらと思ったら、その日は予告なしでやってきた。
ある九月の明け方に、茉莉の部屋のインターホンを鳴らす人物が現れた。真紘を車に乗せて、東京へとんぼ返りしてきた瑠樹であった。
――なんで、ここにくるのよ! しかも、こんな時間に!
――いきなり実家は真紘が緊張するだろ。
瑠樹の後ろにいるのは、すっかり化粧の落ちて疲れた様子の真紘。いかにも通勤用といわんばかりの服装に、大きなトートバックを肩にかけている。着の身着のままという感じである。茉莉と瑠樹の会話をきいて、小さくもなっていた。
そう夜通しかけて車で移動して、ボロボロになった真紘がいたのだった。
この段階で瑠樹がいろいろ動いていることは知っていたが、この真紘の元気のなさから何も知らされていないんだなともわかる。かといって、こちらから彼女に告げることはできない。
瑠樹さんが迎えにいくから、頑張って待っていて――そう思いながら、茉莉は真紘と別れたのだった。
「御曹司と結婚なんて、シンデレラストーリーでしかないと思うのだけど、遠慮する人はいるのね」
茉莉が瑠樹との結婚を嫌がるのが不思議でたまらないと、マダム山形は疑問を呈す。
「そこなんですけど、椎名さん、瑠樹さんが北峰グループの御曹司で、総務部と兼任で子会社副社長であるということ、知らなかったんですよね」
「え、そうなの!」
「ええ」
「名前が『北峰』で、ピンときそうなのに」
「そういうところがのん気というか、大らかというか。瑠樹さんが東京に連れて帰ってきて、はじめて知ったみたいです」
いつ椎名さんを迎えにいくのかしらと思ったら、その日は予告なしでやってきた。
ある九月の明け方に、茉莉の部屋のインターホンを鳴らす人物が現れた。真紘を車に乗せて、東京へとんぼ返りしてきた瑠樹であった。
――なんで、ここにくるのよ! しかも、こんな時間に!
――いきなり実家は真紘が緊張するだろ。
瑠樹の後ろにいるのは、すっかり化粧の落ちて疲れた様子の真紘。いかにも通勤用といわんばかりの服装に、大きなトートバックを肩にかけている。着の身着のままという感じである。茉莉と瑠樹の会話をきいて、小さくもなっていた。
そう夜通しかけて車で移動して、ボロボロになった真紘がいたのだった。