90日のシンデレラ
 (これって、拉致(ラチ)ってきてるっていわない?)
 (ま、こっちとしては、助かるんだけど)
 (こうなったら最後まで協力するのが、同志の務めよね~)

 こうして、真紘はしばらく茉莉と同居することになった。

 パスポート申請の都合で、先に瑠樹が渡航した。すべての準備が整い次第、真紘もシンガポールへ飛んでいった。
 現地ではふたりはただの新婚夫婦である。余計な詮索をする者はいない。どうなるかと思ったけど、今のところ楽しく暮らしているようだ。
 ある意味、これはふたりだけの世界である。理想かもしれない。

 「正体を知らずに恋に落ちるなんて、ロマンチックね。瑠樹さんのことをひとりの男性としてみて、その結果、椎名さんが結婚を決めたのなら、本物じゃない?」
 「そうですね。瑠樹さん、俺から『北峰』の名前を取ったら何も残らないって、よくいっていましたから。お望みどおりの奥様かと」

 茉莉が瑠樹の裏話をひとつ披露すると、ふふっとマダム山形が笑う。

 「終わりよければ、すべてよしよ。鎌田さんも新婚旅行、気をつけていってきてくださいね」
 「はい。しっかり楽しんできますし、喧嘩なんかしていないか確認もしてきます」

 日暮れが近づいていれば、頬に当たる風が冷たい。日本は十二月で、いくら紅葉が残っているといっても冬である。
 対して、瑠樹と真紘の住むシンガポールは、真夏。一年中、太陽が眩しいところである。
 自分の新婚旅行先もそうだけど季節が逆転するから荷物が面倒くさいわねと、そんなことも茉莉は思うのだった。
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