Restart〜二度目の恋もきみと
新しい会社は
竜海さんの学生時代の友人が
経営している会社を紹介してもらった。

慰謝料も財産分与も拒否し、
会社も辞める私を
心配してせめて次の仕事先は世話をさせて
ほしいと言われて根負けしてしまったのだ。

しかし、離婚したばかりで
就職活動をする気力がなかったのは確かで
正直、有り難かった。

まあ、それでもまた新たに
仕事を覚え直さないといけないし
人間関係もゼロからのスタートという
不安はあるけど。

そしてオフィス街の一角にあるビルに
着くと、エレベーターで事務所のある
3階へとあがった。

次の勤め先は前の会社のように
大きな会社ではなくノベルティグッズを企画製作している小さな会社だ。

私はそこで受発注業務や
伝票入力、請求書の発送など 
事務作業全般を任されることとなった。

仕事は少しづつ覚えていけばいいけど
問題は人間関係だ。

昔のいじめられた経験から
私はどうも初対面の人と
仲良くなるのが苦手だ。

しかし、最初の不安もすぐに消えた。

なぜなら、竜海さんが紹介してくれた会社は皆、優しい人ばかりだったからだ。

「見ての通り、人数は少ないし
前の会社のようなお給料は払うことはできないけど、皆いいやつだから分からないことがあれば遠慮なく頼ってもらって大丈夫だから。
私のことも社長ではなく、苗字で呼んでほしい。堅苦しいのが苦手なんだ。」

社長の黒木春真(くろきはるま)は
社長とは思えないほど若くてフランクだった。

「桜良ちゃん、私の娘と同い年だから
まるで娘と仕事する気分だわ。
分からないことがあったら何でも聞いてね」

経理兼営業事務の佐野さんが柔らかな笑みを向ける。

「若い女の子が入ると職場が華やぐな」

恰幅の良い田所さんは営業兼企画デザインで
豪快な笑いの声が特徴だ。










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