Restart〜二度目の恋もきみと
「禅ちゃん、なかなか来れなくてごめんなさい。色々、ゴタゴタしてて..。
それより、なかなか繁盛してるみたいだね」

私は、話をすり替えて店内を見渡しながら言った。

店内はほぼ満席状態だ。

女性客が多いところをみると
禅ちゃん目当てなのだろう。

翠も来店するたびに
禅ちゃんにアピールしているのだが  
毎回サラリと交わされてしまうらしい。
といっても、付き合って5年になる彼氏がいる翠は本気ではなく目の保養なのだとか。

「ゴタゴタ?旦那さんと喧嘩でもしたの?」


「んー、喧嘩というか...」


「この子、離婚したんです。
だから、良い男性いたら紹介してあげてください」

「ちょっと、翠!」

すでに酔いがまわっているのだろうか
離婚という言葉をオブラートに包むことはない。まあ、気を遣われるよりは余程いいけど。

すると翠は、
「大丈夫、男なんて星の数ほど
いるんだから、別れたら次よ、次!」
と力任せにバシッと私の背中を叩いた。

翠は酔って力加減がバカになっていて
叩かれた背中はジンジンと痛む。


私が「痛いなぁ」と翠に文句を言っていると「そうだよ。
それなら、桜良ちゃんの彼氏に
僕が立候補しようかな?」
禅ちゃんがニコリと私に笑顔を向けた。

それが禅ちゃんの
いつものリップ・サービスだとしても
慣れていない私の頬は熱くなってしまう。

「禅ちゃん、冗談はよしてよ」

こんなことをサラッと言ってのけるから
禅ちゃんは女性が途切れないのだ。



「冗談なんかじゃないんだけどな〜。」

翠がからかうように「桜良、顔が真っ赤よ〜」と私の赤くなった頬を突ついてくる。


「でも、これからは前みたいに自由だね。
またいつでもお店に遊びに来たらいいよ。
飲み物はいつものでいい?」


私は「うん、お願いします」
と頷いた。

「禅さーん、適当におつまみも
お願いしまーす。」

翠がそう言うと禅ちゃんは“オッケー”と
奥へと引っ込んでいった。
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