Restart〜二度目の恋もきみと
禅ちゃんが奥へと入ったのを見届けてから
翠が口を開いた。

「あれから、竜海さんとは連絡取ってないの?」

翠の言葉に私は小さくかぶりを振る。

「そっか...」

翠は残念そうに呟いた。


「でも、良い会社も紹介してもらったし
竜海さんにはとても感謝してるの」



「二人のことだから何も言えないけど。
私はもう少しお互い話し合った方が良いと思うんだけど。」


「だけど、なんて話したら良いか分からないし。」

もともと、話下手な自分のことを説明
するのが苦手なのだ。

「ほら、昔いじめられてたこととか
なんで竜海さんに打ち明けられなかったとか何も自分の気持ち、話てないんでしょ?」


「うん。だけど、竜海さん優しいから...
きっといじめられてた過去を知ったら
同情すると思うの。
それを理由に竜海さんを縛ってしまうような気がして嫌なの...」

竜海さんは付き合ってからも結婚してからも
ずっと優しかった。
付き合ってからも一度も喧嘩になることがなかったのだ。
喧嘩したことがないと翠に言ったら
かなり驚かれたけど、毎日が穏やかな小波のような生活だった。
そんな優しい竜海さんを怒らせてしまったのだ。怒鳴られた訳ではないけど、静かに離されていく距離が竜海さんの怒りをあらわしてるようだった。

それに松谷さんのこともあるし。

松谷さんと竜海さんが浮気しているかもということは翠には伝えていない。
もし、伝えればきっと正義感溢れる翠は
竜海さんの会社まで怒鳴り込みに行きかねない。


翠は“う〜ん”と納得のいかないように
考え込んでいる。




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