Restart〜二度目の恋もきみと
すると、翠が肘で私の腕を
ツンツンと突付いてきた。

私が「なに?」と翠に視線をうつすと
「禅さんって桜良には特別に優しいよね。私が一人で来ると毎回桜良のこと聞いてくるし。あれは絶対気があるね」
翠は絶対そうだと言わんばかりにうんうんと首を縦に振る。

「まさかっ、
禅ちゃんは誰にでも優しいじゃない」

そうだ。禅ちゃんは昔から誰に対しても
優しい。だから、私の目の前でビンタされたりと数々の修羅場もこの目で見てきたのだけど。


翠が変なことを言うから、頬が熱くなる。

「あっ、そんな顔赤くして桜良も満更でもないんじゃない?
私は新しい恋もいいと思うわよ。」

「よしてよ。新しい恋なんて今は考えられないんだから。」

しかも、禅ちゃん相手なんて新たな修羅場に自ら飛び込んでいくようなものだ。

そう言えば、高校時代に一度、複数の彼女がいる禅ちゃんに“禅ちゃんは何人も彼女いるけど、どの子が一番すきなの?”と聞いたことがある。
そしたら、禅ちゃんは“僕の初恋はまだだよ。彼女達には求められるから返してあげてるだけ”と言ってたことがあった。
突っ込みどころ満載の回答だけど、禅ちゃんだからか妙に納得してしまったのを覚えてる。
そう言えば禅ちゃんは未だに初恋もまだなのだろうか?

そんなことを考えていると
隣の翠がニヤニヤとからかうような視線を
向けてきてそれから
逃れるように視線を横へそむけた。

すると、向こうのカウンターで他のお客さんを接客している禅ちゃんとパチリと視線があった。

禅ちゃんはニコリと笑顔を返してきて
動揺した私はふいっと視線を赤ワインの入ったグラスに反らした。


ただの友人に対しての笑顔なのに翠が余計な妄想するから変に意識してしまう。
禅ちゃんは大切な友人なのに。

「もう翠が変なこというからっ!
禅ちゃんの前で絶対
変なこと言わないでよ!
お店来づらくなっちゃうじゃない」

私が念を押すように忠告すると
翠は「はいはい」と気の抜けた返事を
返した。
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