Restart〜二度目の恋もきみと
それから黒木とは仕事の話に戻ったのだが
会話の間も俺は上の空だった。

桜良の顔を見ただけで
俺の頬は無意識に緩んでいた。

“お久しぶりです”
と一言挨拶されただけなのに
すぐにあの小さな体を
抱き締めて離したくないと思った。

今も桜良が隣の部屋にいると
思うだけでソワソワと気もそぞろだ。

黒木に指摘されてしまったというのに
それでも俺は結婚指輪を外すことが
出来ないでいる。

これを外してしまったら
桜良との繋がりが完全に
なくなってしまうような
気がしてどうしても決断できないでいた。

桜良と二人で選んだこの結婚指輪は
俺にとっては婚姻届よりも重いものだった。

俺の指輪には桜良の名前が刻まれていて
桜良の指輪には俺の名前が刻まれている。

結婚後はこの指輪を見るたびに
仕事中も桜良を思い出しては
幸せな気持ちになった。

それは今も変わらない。

この指輪を見るたびに桜良を思い出す。

ただ違うのは桜良を思い出して
切なさに胸が苦しくなるということだ。

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