神さま…幸せになりたい

ただいま

今日は望夢が退院する。それなのに朝から望夢はご機嫌ななめだ…それというのも、亘くんがいないからだろう。

狭いソファーベッドだったが、亘くんの隣で、亘くんに抱きしめてもらい温もりに涙が溢れた…何度も口づけを交わし、幸せだった…このまま時間が止まればいいと望夢がいるのに、そんなことを思ってしまった…

幸せな夜が明け始める前、亘くんのスマホが鳴った。西先生からだった。小学生の男の子が脳出血で緊急手術になるから脳外科医の亘くんの力を借りたいと…亘くんはシンガポールで小児の手術もたくさん経験してる…そのことを西先生に話したからだろう。頼まれたら断るわけがない。しかも自分も1人の父になったのだから助けてあげたいと…
「詩織、手術が終わったら帰るから待ってて」そう言って望夢の頭を撫でて行ってしまった。

朝、目が覚めてパパの顔が見えなくて望夢は泣いてしまった。
「パァーパァー、ふぇーん」
「望夢、パパはお仕事に行っちゃったの。パパはすごいお医者だねー夜には帰ってくるから。あやちゃんのとこ帰ろうね」ぐずぐずの望夢を抱っこして久しぶりに病室を出ると西先生がやってきた。

「川原さん、亘借りてごめんね。でもいてくれて助かったよ。あいつは昔から優秀だったからな」
「そうですね。たくさんの人を助けてて凄いと思います。西先生、お世話になりました。亘くんのことも…」
「よかったよ。亘が探してた川原さんを見つけることができて…今度は亘も一緒に飯でも行こう。望夢くん、またね。何かあったら連絡していいからね」
西先生にお礼を言って、エレベーターを降りた。

「詩織ちゃん、のぞ〜、お帰り〜」
「あやちゃん、迎えに来てくれたの?」
「当たり前じゃん!のぞ〜会いたかったよ。覚えてる?」
望夢は、あやちゃんの顔を見てキャキャと笑っていた。産まれてから毎日見てるあやちゃんの顔を忘れるわけがない。
あやちゃんとタクシー乗場に向かおうとすると、こっちこっち…と手を引かれて行った場所には
「高林先生。わざわざ来てくれたんですか?」
「うん。迎えに来たから、乗って。そういえば亘先輩は?」
私は高林先生とあやちゃんに亘くんが緊急手術のサポートで入ってることを伝えた。なら先に行ってようと、高林先生の車で家に向かった。ぐずぐずだった望夢もご機嫌になってくれて一安心した。
< 38 / 51 >

この作品をシェア

pagetop