神さま…幸せになりたい
高林先生の車で家に帰ってきた。家に帰ると見慣れたおもちゃが置いてあって望夢は亘くんのことをすっかり忘れて遊びはじめた。高林先生も一緒に遊んでくれているのを横目で見ていたらあやちゃんに声をかけられた。

「それにしてもよかったね詩織ちゃん。のぞも懐いてくれて…ってパパだもんね。当たり前か」
「うん。まさか会えるとは思ってなかったんだけど…」
「きっと運命なんだよ。そんな言葉しか思い浮かばないけど…でものぞにとっても詩織ちゃんにとっても、きっと天国のご両親やお姉さんも喜んでくれてるよ。きっと!」
「そうだね。喜んでくれるといいけど…」
「じゃあ詩織ちゃんともお別れになっちゃうのか…寂しいけど…」
「あやちゃん?…でもまだだから、亘くん向こうの手続きしてなくてこっちにきちゃったから…」
「でも札幌から離れるんじゃないの?東京の人でしょ?」
「まだ決まってないの。詳しい話できてなくて…」
そんな話をしていたら
「まんま、まんま」
望夢がこっちにやってきた。
「お腹すいたね。もうお昼になるもんね。じゃあご飯食べようか」
退院したばかりの望夢に合わせて、あやちゃんは煮込みうどんを作ってくれた。
望夢はいっぱい食べてくれて、高林先生もあやちゃんも安心してくれた。私も暖かいうどんと暖かい家に帰ってきたとホッとした。

食べ終わってあやちゃんが
「のぞはすっかりママっ子になったんでしょ。ずっとママと一緒だったもんね。久しぶりに会えたんだからあやちゃんと遊ぼ!詩織ちゃんも疲れたんだから少し休みな。のぞは大丈夫だから」
「ありがとう」
その言葉に甘え、あやちゃんと高林先生に望夢をお願いして部屋に向かった。

1週間ぶりに両親と姉の写真に手を合わせた。亘くんに会えたよ。これから3人で頑張るから見守っててね。3人の顔が安心したように笑った気がした。

リビングからは望夢の笑い声が響いている。沙代子さんと、あやちゃんに出会えて、いつも側にいてくれた。どんなに寂しくても、苦しいことがあっても乗り越えて頑張ってこれた。そう思うと私は…この場所から離れたくないと思ってしまった。

東京には辛い思い出が多すぎる。沙代子さんやあやちゃんがいるこの札幌の土地で亘くんと生きていきたいって言ったらなんて言うだろう…やっぱり反対されるだろうか?ご両親もいる東京に戻りたい?それともシンガポールに行きたい?どっちの答えを言われてしまうんだろうか…不安になっていると、ピンポーンとインターフォンの音が鳴った。亘くん帰ってきたのかも…と急いで玄関に向かった。
< 39 / 51 >

この作品をシェア

pagetop