誰か僕に気がついて
デパートの屋上で
母さんは夢中でしゃべった

借金でマイホームの夢が
消えたこと
父さんが浮気をはじめたこと
母さん自身も
子宮の病気になったこと

僕のことで
親戚や近所から
さんざんなじられたこと
毎日のように
サラ金から脅されていたこと

僕の何倍も
母さんは苦しんでいた

死にたいと思っていたのは
母さんだったかもしれない

僕は何も知らなかった

「どんどん変わっていく
達也が怖かった
どう接していいのか
わからなくなった

だけどそんなふうに
達也を追い込んだのは
母さんだったんだよね
ごめんね、達也・・

母さんね、お父さんが
借金を作ってから
ずっとお父さんを見下してきた

だけど、ほんとうは
お父さんがいちばん
辛かったかもしれない

親友のために保証人になって
裏切られて・・
辛かったのに

母さん支えてあげられなかった
お父さんの心の声を
聞いてあげられなかった

お父さんのいいところ
ちゃんと見てあげられなかった

じっくり考えれば
解決の道はいくらでも
あったんだよね」



涙で顔をぐちゃぐしゃにして
母さんは必死に話してくれた

僕も父さんも

母さんも沙知も

みんな初めて本音でしゃべった
そしてみんなで泣いた










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