春の花咲く月夜には
紗也華と飲みに行った翌日、土曜日。

私は紗也華のアドバイス通り、新しい洋服と化粧品を買うために、早速ショッピングモールに出かけた。

ここ5年くらい、買い物に行っても「なんとなく」とか「古いから」とか、「なくなったから補充する」・・・というスタンスの買い物がほとんどだった気がするけれど、今日はだいぶ、気持ちが違う。


(できるだけ・・・、賀上くんに『かわいい』とか『綺麗』って思ってもらえるものを買いたいな)


似合う服。似合うメイク。

好きなもの。好きな色。

お店の中を見ていると、買いたいなって思うものはたくさんあるけれど、今はやっぱりどうしても、賀上くんがどう思うかを基準に考えてしまう。


(・・・そういえば、賀上くんはどういう感じの服が好きなんだろう・・・)


私を好きだと言ってくれるのだから、本当に・・・ごくごく普通の感じでいいのだろうか。

けれど、元カノである葉月さんは華やかだったと思うから、実は派手な服装が好きだとか・・・。


(・・・うーん・・・、わからないな・・・)


けれどもし、派手な服装が好みだったとしても、それを着た私が、華やかだという葉月さんのようになれるとは到底思えない。

葉月さんは、見たことすらもないだけに、私の中でスーパーモデルのようになっていた。


(私は・・・、私に似合う服で精いっぱい、かわいく見えるようにがんばるか・・・)


紗也華にも、背中を押してもらったし。

私なりの「かわいい」とか「綺麗」を目指してみよう。

いくつかの洋服屋さんに入って試着して、店員さんが褒めてくれ、自分でも「いいな」と思った服を数点買った。

化粧品売り場では、新色のアイシャドウとリップとチークも買ってみた。

ついでにパックや美容液までも購入し、私の両手はショッピングバッグでいっぱいだった。


(・・・さすがにちょっと、買いすぎたかな・・・)


私は普段、買い物もわりと慎重派。

こんなに一気に買ったのは、もしかしたら、生まれて初めてかもしれない。

だけど不思議なくらいに後悔はなく、早く着るのが楽しみで、早くメイクをするのが楽しみで、賀上くんに会うのが楽しみで・・・、わくわくとする気持ちでいっぱいだった。

こんな気持ちに、なれたことがとても嬉しい。










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