春の花咲く月夜には
「うん・・・、そっか。そうだよね・・・」

考えてみれば、賀上くんも、付き合ったとして・・・自分の口からいろんな人に「付き合ってる」と宣言するタイプではない気がする。

いつになるかはわからないけど、私の自信がつくまでは、周りには秘密にしてもらおう。

「うん。もうさ、恋愛で気負わなくたって平気だよ。まあ・・・今度は、心春から賀上くんに『好き』とか『付き合って』って伝える必要があるわけだから、それがハードルになるかもしれないけどね」

「う・・・、確かに」

「ふふ。でもまあ平気だよ。・・・んー・・・、そうだな、とりあえず洋服買うとかメイクがんばるとか女子力アップしておけば?自信に繋がるだろうしね。そしたら賀上くんにも『好き』って言いやすくなるかもしれない」

「・・・うん」

不思議なくらい、今の私は気持ちが明るく軽くなっていた。

それはもちろん、紗也華が話を聞いてくれたから。

「・・・ありがとう。なんか・・・、元気になった」

「おっ。よかった。じゃあ今度は、『彼女になりました』報告待ってるからね」

「うん」

ほっとして、そして一緒に笑顔になった。

よし、と、2人で気を取り直し、それぞれビールを頼んで飲み直す。

「あ~・・・っ!!けど、やっぱ元カレの先生ムカつくな!!心春にずっとこんな思いをさせてきて・・・!!最後になんか私がひとこと言ってやりたい!!ちょっと、スマホ貸して!!」

「い、いや・・・、もう大丈夫だから。それはヤメテ・・・」

今はもう先生に、「好き」の感情はないけれど。

思い出すと、まだ、傷の痛みは残ってる。

だけどそれが、わかりやすく小さく小さくなってきた。

いつか、傷跡までもがなくなって、本当に、先生のことを忘れられる日が来るかもしれない。

そんな、希望が見えた今日。

私は、新しい一歩を踏み出せそうな予感がしていた。










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