春の花咲く月夜には
ご機嫌な気分でいる今日は、仕事の進みも順調だった。

いつもは気が重い作業もサクサクと一気に進んでしまう。

普段からこの調子で仕事ができるととてもいいなと思うから、これからは、できるだけお気に入りのものを身に(まと)い、時々は、メイクもアップデートするといいかもしれない。


(・・・さてと・・・。とりあえず一段落ついたから、そろそろ郵便局に行く支度をしようかな)


今日は私が郵便局へ行く係。

時刻は、15時を少し過ぎたところだ。

軽く身支度をして、郵便物の入った黒いトートバックを手に取ると、出入り口付近に立っていた主任の城井さんから「向居さーん!」と声をかけられた。

「これから郵便局?」

「はい」

「じゃあ、ついでにマーケティング部寄ってってくれるかな。課長の西谷さんにこれ渡してほしいんだ。速達で届いてて」

そう言うと、城井さんは「速達」の印が入った封筒を私に差し出した。

私は「わかりました」と言って、それを受け取る。

「じゃ、お願いね~」

「はい」


(・・・マーケティング事業部か・・・)


紗也華はもちろん、賀上くんもいる部署だ。

会えるかな・・・と思う気持ちと、会ったらどうしよう・・・という気持ちが交差する。

今日は新しい服を着てきたし、メイクも上手にできたから、会えたらちょっと嬉しいけれど・・・、賀上くんは何も気づかないかもしれないし、いざとなると、やっぱり緊張してしまう。

単純に、賀上くんに・・・好きな人に会うという緊張感はもちろんだけど、自分なりに変身している状態だから、彼の反応がやっぱり気になる。

「なんか気合い入ってるな」と思われるのは恥ずかしいし、「なんかヘンだな」と思われたら結構凹む。


(・・・ま、まあ、ちょっとした変化だし、何も気づかないとは思うけど・・・)


それ以前に、会うかどうかもわからない。

完全に、余計な心配だと思う。

けれど、賀上くんのことを意識して、選んだ服と頑張ったメイクなのだから。

どうしても、彼の反応が気になってしまうのだった。




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