春の花咲く月夜には
「心春~!」

駅の改札を出て左側。

大きな白い柱の前で周囲を見回していると、紗也華が手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。

カーキのシャツにブラックデニム。

仕事の時は、きれいめな感じの服装が多い紗也華だけれど、今日は、いつもより少しカジュアルだ。

「紗也華、今日かっこいいね」

「ほんと?ライブハウスってほんとに久しぶりなんだよねえ。何着ていいか迷っちゃって・・・。旦那に相談して決めたんだけど」

「そうなんだ。すごくかっこいいし、似合ってるよ」

紗也華はすらっとしているし、着こなし方も上手いから、こういう服装は本当にとてもよく似合うんだ。

私の言葉に、紗也華は照れたように「ヘヘっ」と笑う。

「ありがと。心春もいいねっ、いつにもましてかわいいじゃん。彼女としては、初のライブだもんねえ」

「・・・うん」

私が今日着ているのは、先週買った、黒いロング丈のワンピース。

イヤリングとネックレスも、お気に入りのものをつけてきた。

髪はゆるくまとめたアップにし、メイクも結構がんばったんだ。

「・・・気合い、入れすぎたかな」

「ふふ。大丈夫だよ。それに、心春が気合い入れて来てたら賀上くん絶対嬉しいって」

ちょっと恥ずかしいけれど。

「ね!」と、にっこり笑った紗也華の言葉に勇気をもらう。

ーーーそう。

今日は、待ちに待った「T's Rocket」のライブの日。

彼のライブに行くのは2回目で、付き合い始めてから・・・彼女として行くのは初めてだ。

なんだかとても不思議な気持ち。

彼氏のライブを観るのって、どんな気持ちなんだろう。

考えると、そわそわとして落ち着かないけれど、やっぱり、とても楽しみだった。








< 170 / 227 >

この作品をシェア

pagetop