春の花咲く月夜には
「じゃあサクちゃん心春ちゃん、またね~」

「はい、ごちそうさまでした」

みんながまだワイワイと盛り上がりを見せる中、私と咲也は、一足早くお店を後にした。

「金曜の夜なんだし、そろそろ2人は帰ったほうがいいんじゃなーい?」というマサさんの言葉もあったけど、みんなの話題がどんどんディープな音楽話になっていったこともあり、ついていけなくなった私を咲也が見かねて、「帰ろうか」と声をかけてくれたのだった。


(私も音楽は好きだけど・・・、聞く専門だし、みんなの『好き』には、知識も思いも到底届かない感じだったな・・・)


みんな、音楽のことが本当に大好きなんだと伝わってきた。

好きなことを話すって、やっぱりとても楽しいし、嬉しくなれることだよね。

もしかしたら、咲也ももっとみんなと話したかったかもしれないけれど・・・、あのタイミングで「帰ろう」と言ってくれた彼の心遣いが嬉しくて、私はそれに甘えたのだった。

「心春さん、疲れてないですか。まさかの大人数になってたし、うちのメンバーとはほぼ初対面だし・・・、結構気ぃ遣ったでしょ」

「ううん。私より、みんなが気遣ってくれた感じだったから。最後はさすがについていけなくなっちゃったけど・・・、たくさん話しかけてくれて、おもしろかったし、楽しかったよ」

「・・・そっか。アイツらうるさいだけって気もしてたけど・・・、心春さんが楽しかったなら、よかった」

「うん」

ショウくんは、以前からの印象通り、明るくて楽しい子だったし、タクミくんは知的でちょっとブラックな感じでおもしろかった。

ナオキくんは・・・どちらかというとおとなしい感じだったけど、時々ボソッと呟くひと言が結構おもしろく、私は何度も笑ってしまった。

みんなタイプは違うけど、咲也の友達、ということがしっくりときた。

「咲也も楽しそうだったよね。みんなといる時、学生時代の咲也もこんな感じだったのかなって思ったよ」

「まあ・・・、そうかな。高校からずっと一緒だし」

「ふふ、そうだよね。みんなと話してる時の咲也・・・、なんかかわいかった」

「・・・えっ」
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