春の花咲く月夜には
咲也がピタリと足を止め、複雑そうな顔をした。

私はそこでハッとして、しまった・・・と、心の中で慌てだす。


(多分、『かわいい』って、咲也にとってはNGだ・・・)


彼は、私より年下なことを気にしてる。

いつも、年下っぽさや頼りなさを感じさせないように・・・と、心掛けているようだから、「かわいい」は、彼にとっては望まない表現かもしれない。

「・・・それは、子どもっぽいってこと?」

「そ、そうじゃなくて。・・・えっと・・・、すごく大人で素敵だなって感じる男の人でも、少年っぽさが見える時ってあるでしょう?そういう時に感じるかわいらしさというか・・・」


(う、うーん、難しい・・・。なんて言えばいいんだろう・・・)


子どもっぽいとは違う感覚。

ちょっとキュンとするような・・・。

彼が誤解をしないよう、「かわいい」を伝えられたらいいけれど。

「・・・咲也は・・・、いつもかっこいいんだけれど、今日は、高校生の頃の咲也が見れた感じがしたの。そうすると・・・、やっぱり、『かわいい』って感じる部分があって。うーん・・・、そうだな・・・、いつものかっこよさとのギャップがあるから、余計にそう感じたのかもしれない」

「・・・、ギャップ・・・」

「うん。そのギャップもすごくいいなと思うし、私は・・・、どっちの咲也もすごく好きだよ」

この気持ちはもちろん嘘じゃない。

みんなと一緒にいる時の、かわいいって感じる咲也のことも、私と2人でいる時の、かっこいい咲也も両方愛しい。

その想いを伝えるように見上げると、咲也は「そっか・・・」と小さく頷いて、後ろ髪をクシャッと掻いた。

「少し複雑だけど・・・、それならまあ、いいのかな」

そう言って、彼は照れたような顔をした。

その表情がかわいいなって思ったことは、心の中にしまっておこうって思った。









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