春の花咲く月夜には
「T's Rocket」のメンバーも、お客さんたちもみんないい顔で、最後まで大満足を感じるようなライブだった。


(・・・すごくよかったな。本当に・・・、予想以上に)


気が付けば、私も、ライブ中はリズムに合わせて身体を揺らして楽しんでいた。

ふと、周りを見てみると、他のお客さんたちも、興奮しながら満足そうに話をしている。


「今日も『Tロケ』よかったね~」

「よかった!ショウの声はやっぱいいよね」


「次ライブ告知なかったよね?いつなんだろー」

「ねー、早くも待ちきれないよねえ」


「はあ~、サクヤは今日も最高すぎる!!」

「ねー!結婚してほしいっ」


周りにいる女の子たちの口々から、バンドへの称賛やギターの彼の名前が飛び出す。

やっぱり人気があるんだな、と、それに納得をする自分がいた。


(ギターも上手だし、なによりかっこいいもんね・・・)


相変わらず、前髪で顔はよく見えなかったけれど。

それでも、ステージ上の彼の姿はどんな時でも絵になった。

夢にまで出てきそうなくらい、瞼の奥に焼き付いている。



ーーーほどなくして、ホール内に明かりがついて、ライブ終了の合図となった。

ホールにいた客たちは、満足感いっぱいに、順に出口に向かって行った。


(・・・ほんとにすごくよかったな。あー・・・、耳がへんな感じがしてる・・・)


ロビー内の雑音が、うまく耳に届いてこない。

頭も耳も、そして心も身体も、ふわふわとした感覚だった。

これは、決していやじゃない。



汗をかき、のどが渇いたのでドリンクチケットを交換しようと思ったけれど、ドリンクバーには長めの列ができていた。

これは、結構待つかもしれない。


(あっ、そうだ!それよりも、あの彼にチケット代を渡しにいかないと・・・)


思い出し、楽屋はどこだろうかと考える。

けれど、わかったところでいきなり楽屋には行けないだろうし、そもそもそんな勇気もないので、近くにいるスタッフの男性に声をかけることにした。
< 27 / 227 >

この作品をシェア

pagetop