春の花咲く月夜には
「あー・・・いや、というか、オレ、中途採用でこの会社は先月入ったばっかりなんです」

「えっ、そうなんですか?」

「はい。なのでここでは新人です。こはるさん、ずっとオレに敬語使ってくれてますけど・・・、紗也華さんの友達というか同期ですよね?」

「はい」

「じゃあ、オレは完全に後輩だし年下ですよ。今25なので」

「25。そう・・・、そうなんだね・・・」


(そっか、25・・・)


年下だとは思っていたし、そのぐらいだという予想もしてた。

だからそれほど驚くことはないけれど、やはり若いな、と、3つの違いにそう思う。

「・・・ていうか、すいません・・・。まさか会社の先輩だとは思ってなくて。オレ、こはるさんに結構失礼なこと言ったりやったりしてるよな・・・」

何かを思い出したのだろう、賀上くんは手を口に当て、「やばい」といった表情になる。

確かに、私もまさか後輩だとは夢にも思わなかったけど。


(でも・・・)


「別に、失礼なことなんてなかったですよ」

「え、いや・・・、そうですか?」

「うん」

ある種の強引さは確かにあったと思うけど、基本的にいい人だという印象しかない。

「おねーさん」呼びは、ちょっとぎりぎり微妙なとこではあるけれど。

「・・・ならいいんですけど・・・」

彼はほっと息を吐き、改めて、と言った様子で私を見下ろす。

そして、「それにしても」と、少し嬉しそうな顔で言う。

「こはるさん、プライベートの時と仕事の時と、印象変わらないですね」

「・・・」

・・・喜んでいいところだろうか。

悩みつつもそれは一旦脇に置き、私は、いやいや・・・と、心の中で先にツッコむ。

「賀上くん・・・は、変わりすぎててびっくりしたよ。本当に・・・別人みたいに違うから」

気怠げな雰囲気から一変。今は、デキるイケメンサラリーマンの風貌だった。

こんなに綺麗な男性はそうそういないと思うけど、やはり、別人じゃないかと思ってしまう。
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