春の花咲く月夜には
(・・・うーん。改めて見ると、賀上くんてやっぱりかっこいいんだな・・・)


背が高くてシュッとしているし、なにより整った顔立ちだ。

ギターを弾いている姿は絵になるな、と思っていたけれど、スーツ姿もモデルのようにかっこいい。

「すみません、お待たせして」

「う、ううん。色々見てたし大丈夫だよ」


(・・・というか、そわそわしすぎて、時間の経過がよくわからなかったっていうのが本音かな・・・)


ただ、とにかく落ち着かなくちゃ、そわそわしているのがばれないようにしなきゃって、そうするのに必死だったから、あまり時間のことは気にしていなかった。

それに、ここは3階建てで結構広いし、文具コーナーもある店なので、色々見れて楽しかったことも事実であった。

「じゃあ、行きましょうか」

「うん」

頷いて、読んでいた雑誌を棚に戻すと、2人で本屋を後にした。

そこから、たわいもないことを話しつつ、賀上くんについて歩いていくと、薄暗い路地裏のような場所に出て、彼はその道を慣れた感じで入っていった。

道沿いには、常連しか入れないような、ひっそりとしたお店がぽつり、ぽつりと並んでいる。

アウェーのような空間に、ドキドキしながら歩いていると、「ここです」と言って、賀上くんが足を止めた。


(あ、かわいいお店・・・)


雑貨屋のような外観だった。

白い壁に、茶色く塗られた店のドア。見上げると、直径30cmくらいの白い丸い看板に、『rabbit』という店名が小さく表示されている。

橙色の明かりに看板が照らされていて、とても温かな印象がした。


(・・・よかった。路地裏だから怖そうなお店だったらどうしようかと思ったけど・・・)


ひとまず私はほっとした。

その時、賀上くんが突然くるっと私を振り返り、言いにくそうに話し出す。

「言い忘れてましたけど、ここの店長、結構クセが強いです。慣れないと驚くかもだけど、いい人なので心配しないでください」

「えっ?う、うん・・・」

店の外観の雰囲気に、ほっとしたところだったけど。

クセが強い?

いったいどんな人だろう・・・。
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