春の花咲く月夜には
「いーや、わかる。だって未だに先生の・・・元彼の誕生日をスマホのパスワードにしちゃってるぐらいだよ?このままだと絶対彼氏できないし、こーやってスマホのロック、簡単に解除されちゃうのっ!」


(・・・うっ・・・)


イタイところをついてくる。

上手く言いくるめられた気もするけれど、先生のことを持ち出されると、これ以上、何も言えなくなる私。

さすがにパスワードは変えよう変えよう・・・と思いつつ、実行できない自分にも、後ろめたさがあったから。

「・・・まあね・・・、おねーちゃんがこういうの苦手だっていうのはわかるけど、もっと気軽な気持ちでさ。とりあえずお試しで会ってみればいいんだよ。『平沢さん』、写真は結構イケてるし、爽やかでいい人そうな感じだし。実際めっちゃいい人かもよ?」

「・・・・・・」

普段なら、そうはいってもアプリで知り合った人と会おうだなんて思わない。

けれどもう約束をしてしまっているし、さっきの今でキャンセルは申し訳ないとも思う。

それに、本当にもしかしたら・・・、「平沢さん」は、とてもいい人かもしれない。


(先生のことも、いいかげん忘れなきゃって・・・忘れたいって思うしね・・・)


・・・そうだな。

会う前から苦手だ嫌だと決めつけて、怖がってしまうのは私の悪い癖かもしれない。

一度くらい、気軽な気持ちで会ってみようか・・・。

それに万一よりも少ない確率だろうけど、「平沢さん」が運命の人だという可能性だってゼロじゃない。

そうだな、そうかもしれない・・・、と、わずかな望みもわいてきて、私は「平沢さん」に会ってみようと決意した。





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