春の花咲く月夜には
翌日の午後。

約束通り、私は平沢さんに会いに待ち合わせのカフェにやってきた。

平沢さんから提案された、ゆったりとした雰囲気の、どちらかといえば大人向けのチェーン店。

よく買い物に行くエリアにあるので、休憩がてら何度か入ったことがある。

初対面の男性と二人きりで会うのはやっぱり緊張するけれど、馴染みのお店であったので、私は少し、ほっとした。

とはいえ不安、やっぱり不安、その中にちょっぴり期待・・・という心境の中、カフェの入り口付近で待っていると、「こんにちは」と横から声をかけられた。

「『こはるさん』、ですよね?お待たせしてすみません。えっと・・・、平沢です」

「っ、そうです。こんにちは・・・」


(うわあ・・・、写真の・・・プロフィールで想像してた通りの人だ・・・)


あれから、平沢さんのプロフィールは何度も読んで確認していた。

35歳の会社員。趣味はフットサルとスポーツ観戦。最近は、料理にはまっているとも書いていた。

年相応の爽やかな男性、という印象を持っていたけれど、まさにそのイメージ通りの男性だった。


(私は・・・、大丈夫かな)


アプリのアイコン写真は奈緒が適当に選んだものだ。

平沢さんが私にどういう印象を持っているかはわからないけど、とりあえず無難に・・・と、服装は、白のニットに黒のロングスカートを合わせてきた。

ヘアスタイルは、セミロングの髪をそのまま下ろして、メイクも出勤の時とほぼ同じ。

とにかく無難に・・・と思ってきたけれど、全体的に、ちょっと地味だったかもしれない。

「こはるさん、この店はすぐにわかりましたか?」

「あっ、はい。何度か来たことがあったので」

「そうですか。よかった・・・。僕が指定してしまったので、迷ったら申し訳ないなと思っていたんです。少し奥まった場所にありますから」

「・・・確かに、初めてだとわかりにくいかもしれないですね」

「そうなんですよ。でも、よかった」

平沢さんが、ほっとしたような笑顔になった。

その表情がとても優しく感じられ、緊張していた私の心が少しほぐれた。


(よかった・・・、すごくいい人そうだ・・・)


初めてのマッチングアプリでの出会い。

会うのは不安だったけど、平沢さんがとても優しそうだったので、ひとまず私はほっとした。

そしてそれから二言三言言葉を交わし、穏やかな雰囲気で平沢さんとカフェに入った。







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