春の花咲く月夜には
それから少し話をし、先生は、また違う子たちの元へと移動した。

長い時間ではなかったし、緊張して上手く話せなかったけど、それでも、またこうして先生と同じ時間を過ごせたことがなによりとても嬉しかった。



「じゃ、みんなまたね~!」

「うん!今日はありがとねー」

「楽しかったー!また近々集まろうよねえ」

居酒屋での会がお開きになり、みんなで最寄りの駅に移動した。

ここからは、電車の路線がそれぞれ違う。

みんなで言葉を掛け合い手を振りあって、笑顔で別れる。


(えっと・・・、私は5番線か)


同じ路線で帰れる子たちもいるようだけど、私は一人のようだった。

もう一度みんなに手を振って、5番線のホームへ向かう。

と、その時、「向居」と声をかけられて、私はすぐに振り返る。

「5番線だろ?俺もそうなんだ。引っ越して、多分向居の隣の駅」

「えっ・・・、そうなんですか?」

「うん。だから途中まで一緒に行こう」

「・・・!はい!」

緊張する。だけど嬉しい、どうしよう。

先生と、正真正銘二人きり。

こんなことは初めてだった。


2人でホームに降り立って、すぐに来た電車に乗った。

車内は程よく空いていたため、先生とは、隣同士で席に座ることができた。

こんなこと・・・、今日、一番の緊張状態かもしれない。

先生は、色々と私に話題を振ってくれるけど、ちゃんと答えられているかはわからなかった。

「・・・でも、向居はすごく綺麗になったよなあ。さすが女子大生って感じで最初びっくりしたぞ」

話の合間、突然先生にそう言われ、私の頬が一気に火照った。

なんて答えたらいいのかわからずに、ぶるぶると首を横に振る。

「彼氏はいないんだったっけ?けど、好きな人はいるのかな」

「い、いえ」

「そうなのか?片思いでも、好きな人ができると女の子っていきなり綺麗になるだろう。そういう理由もあるのかなと思ったけど」

「いえ・・・」
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