春の花咲く月夜には
(・・・10年・・・?10年位付き合ってた人と結婚って・・・。でも待って、私、半年前まで先生と・・・)


理解ができず、目の前がぐらぐらと歪んでいくような感覚がした。

そんな私を、伊織が「ちょっと!」と心配そうに覗き込む。

「やばい、心春マジでショック受けてるよ。大丈夫?」

「・・・っ、あ、う、うん・・・」

「心春はめっちゃファンだったもんねえ、先生のこと」

「・・・・・・」

どうしよう。

混乱する。

待って、どうして。

どういうことなの・・・?

伊織に頭をポンポンされながら、私は、なんとかみんなの話を聞いていた。

「でも、10年って結構すごいよね。途中、一度も別れたりとかなかったのかな」

「うーん、それがなかったみたいなんだよねえ。私も上坂先生からなれそめ聞いただけだから、詳しくはわからないんだけど・・・。元村先生自身はあんまり教えてくれないし」

「そうなんだー」

「あ、でも、遠距離になったことはあるみたい。去年とか一昨年とか?んー・・・、なんか数年、彼女が仕事でアメリカ行ってたんだって。で、彼女が最近帰国して、結婚ってなったみたいだね」


(!)


伊織が話していた時期と、自分の状況を重ね合わせる。

・・・まさか。

この、話が本当ならば。

彼女がアメリカに行っていた時期にーーーーー、先生は、私と付き合っていたことになる。

「・・・・・・・・・」


(嘘、だよね・・・?)


先生、今すぐ嘘だと言って。

「心春?やだ、なんかほんとに顔色悪いけど・・・大丈夫?」

「っ・・・、う、うん・・・・・・、ごめん、びっくりして」

「まあねえ、ファンとしては確かにショックはあるよねえ」

「う、ん・・・」


(・・・だめだ。あんまり動揺しちゃったら・・・・・・、万一、先生との関係がばれてしまったら)


ショックの中で、私は落ち着かなくちゃと必死に思った。

先生と付き合っていたことはばれてはいけない。
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