春の花咲く月夜には
思い出したのか、賀上くんが笑顔になった。

その、彼の横顔と、楽しい話題に緊張が少し解けてく。


(ふふ、その時の賀上くん、ちょっと見てみたかったかも)


きっと最初は戸惑って、それでも優しく聞いていたんだろうな。

それで色々話を聞くうちに、自然と楽しくなっていったのだろう。

「どんな店主さんなんだろう・・・。ちょっと行ってみたい気がする」

怖いもの見たさのようだけど。

わくわくしながら私が言うと、賀上くんは「お」と言って、楽しそうな顔をした。

「行ってみますか?けど、この前一緒に行った店の・・・マサさん以上にキャラの濃いオッサンに、マンツーマンで2時間以上ウォンバット語られますよ」

「に、2時間・・・!?」

私はゴクリと喉を鳴らした。

マサさん以上に濃いオジサンとのマンツーマンでの2時間トーク・・・、賀上くんも一緒に行ってくれるとは思うけど、想像すると、結構つらいかもしれない。

「・・・やっぱり、やめておこうかな」

「ははっ、切り替え早えー」

「いや、あの・・・、2時間はちょっと自信がなくて」

「素直。けどまあ、わかります。おもしろいですけどね。心春さんが行くとしたら、そうだな・・・まずは、マサさんで濃いオッサンの免疫強化してからがいいかもしれません」

「・・・・・・」

かなりイカツイ、スキンヘッドの男性の姿を思い出す。

最初はかなり戸惑ったけど・・・、いい人だったし楽しかったな。

料理もすごく上手だし。

「・・・うん。マサさんとはもう少しゆっくり話してみたいかも」

「マジか。めっちゃ喜びますよ。ああ・・・、そうだな、ああ見えてマサさんかわいいものが好きだから、結構盛り上がるかもしれない」

「あ!お店もかわいかったもんね」

「そう。マサさんの見た目とのギャップが激しすぎるっていう」

「うん」

2人で笑った。

その時、信号が青に変化して、私たちは一緒に歩き出す。

ゆっくりと。

歩幅は変わらないけれど、その足取りは、さっきよりもずっと軽かった。







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