私ってそういうこと?/②発熱&開眼編
その8
夏美



「…夏美、見事だわ。あなたの導き出した回答、ほぼ正解よ」

ふう…、やはりそういうことだったのね…

「まだ部外者のあなたが、限られた情報の中で、よくそこまで分析できたわ。いいわね…、来年の春からは、頼むわよ」

「こちらこそ…」

私はただ、恐縮してたわよ(苦笑)


...


「そこで、せっかくだからあなたには言っとくわね。…紅ちゃん、今回での決着後、墨東会とは友好関係に持っていくわよ。あくまで勝者の理論ではなく、対等のね」

「!!!」

私は言葉が出なかったわ

あの仇敵だった墨東会と今度は手を結ぶって…

「今のあなたじゃあ、ピンと来ないかもしれないけど、火の玉河原での勝利で紅ちゃんが墨東会側に求めたのは、ただ一点なのよ」

「な…、何なんですか、それって…」

私はどこかおっかなびっくりって感じで、そう甲斐先輩に尋ねていたわ

「…それは、砂垣順二のパージよ」

ふう…、紅丸さん、それだけの為に紅組の存亡をかけたの…?

...


「あのね…、墨東会から砂垣の存在が立ち消えれば、今まで南部くんとの間で地道に積み上がてきたものも開花させられるのよ。もっともそんな急には無理だし、何かと障害出てくるから、かなり長期的なスパーンで描いてるだろうけど。まあ、今は詳しくは言わないけど、紅ちゃんはこれをきっかけにして、東京埼玉のカベだけでなく、最終的には男と女、赤と黒のカベまで崩す腹よ…」

もう頭がついていけない…

「あの怪物は常に同時進行、並行突破なのよ(苦笑)。夏美には南玉の”正式”になったら、おいおい話していくわ。とにかくハンパなスケールじゃないわよ、紅丸有紀は。その彼女と私らは一蓮托生で歩んでいくけど、常にトリッキーな関係をあの人が誘導していくわ。そのシグナルを的確に掴む人間がいないと、ますます規模の膨らむ南玉連合は軌道を見失う。…あなたにはその目利きを期待してるから」

なるほど…

何だかようやく目の前の霧が晴れた感じがしたわ

同時に、私の求められる役割の輪郭もだいぶくっきりとしてきたかな…


...


そして季節は二つ移り変わり、翌年の春…

私は二つの門をくぐったわ

滝ヶ丘高校と南玉連合…

タッコとマユミもそれぞれの志望校に入れ、3人は別々の道を歩み始めたわけでね…

でも、私が南玉連合入りしたことで、私たちは単なる中学時代の仲良しという関係を超えたところってとこにもね(苦笑)


...


とにもかくにも、私の新しい毎日はスタートしたわ

自分で言うのもなんだけど、ピカピカと輝いて、桜の花びらも私にまとわりついてくるような気がした(苦笑)

何しろ、私はゴールデンウィーク中に開催される、第2回親善混合駅伝出場枠を得るための”準備”に余念がなかったわ

ほぼ毎日、区間距離約4キロを走ってタイムを計ってね

そのデータを陸上部の主将に提出したのよ

もっとも私を選抜してくれとは口には出さず、”出たい気持ちはあるので準備はしています、タイムをご覧いただき、ご考慮を”、とね…

これ…、自分的にも、周囲から見たら鼻につくやり方だってのは十分承知してるのよ

でも、敵を作ろうが、やらずにはいられない…

はっきり言って、これ、昔からよ…

だから、この駅伝への切符を手に入れるためなら、それもいとわないって


...


そしてもう一つのチャレンジ…

南玉連合への加入は、これまた刺激的極まる体験だったわ

4月上旬…、新規メンバーの顔見えの場があって、私はまるで入社式のような気分で、会場となっていた空ビルの一室に赴いた

いよいよだ…

夢みたいだ…!

この私が猛女の巣に飛び込んだ…

やるっきゃないって!






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