きみと3秒見つめ合えたなら
 バスの中で私と桐谷くんは一度も話をしなかった。...というより、話せない。

 春菜ちゃんが一人で私と桐谷くんに話かけている。

「絢音先輩って、桐谷先輩のこと、苦手ですか?」春菜ちゃんが小声で聞いてきた。

 飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「な、なんで?」

「全然、喋らないじゃないですか?」
「そ、そうかな?そんなことないよ。」
チラッと桐谷くんを見ると、スマホに目を落としていた。

 ピロリン...
 私のスマホの通知音がなった。

 桐谷くんだった。

『先輩、オレのこと苦手ですか?(笑)』
 なにこれ。
 春菜ちゃんとの話、聞いてたわけ?

『1年前は苦手だった』
 こっそり返信する。

『今は?』
 意地悪な質問。

『それほどでも。』
 こんなスマホで簡単に「スキ」なんて言わないって決めているんだから。

『オレはずっと相川先輩推しなんで。』
 思わず笑いそうになる。

『久しぶりに聞いた。』
 春菜ちゃんに気づかれる前に、止めよう。私はスマホをカバンに戻した。

 桐谷くんの心が離れていかないか、不安だったから、この数十秒のやり取りがとても嬉しく、胸が踊る感じがした。
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