きみと3秒見つめ合えたなら
 宿舎につくとそれぞれの部屋に別れた。

「絢音。春菜、大丈夫?」
景子が心配そうに私に聞く。

「大丈夫って?」
「いろいろよ。あの噂知らないから、あんなことを言うし。あと、桐谷との距離感よ。近すぎない?しかも、なんかあざといかんじがするんだよね。」

「確かに近いけど。兄と妹みたいな?」
「そんなのんびり言って。好きなんだったら、取られないようにしなさいよ。」

 春菜ちゃんが、桐谷くんのこと好きってこと?



 次の日から、試合が始まる。
 私は勇気を出して、桐谷くんに一言「頑張って」と言おうと思っていた。

 サブトラックで桐谷くんを探した。
いた。でも、隣に春菜ちゃんもいた。
春菜ちゃんの幅跳びと桐谷くんの400mは確かに時間が被っているけど。

 遠目に見ても、わかるくらいイチャついていた。春菜ちゃんが桐谷くんにべったりだった。
 桐谷くんもまんざらではない様子に私はイラッとした。

「春菜ちゃん、ゴンちゃんが招集場所と時間、変更ないかよく確認しておけって。」
 そんな話、ゴンちゃんにされてない。
 完全なる私の嘘。

「あ、先輩、伝言ありがとうございますー。桐谷先輩にね、テーピングしてもらってましたー。」

 いつもの春菜ちゃんだった。
 天真爛漫で人懐っこい感じ。
 悪気のないのはわかる。

 ...でも、昨日の景子の言葉が気になってしまう。
 あの可愛らしさは、天然じゃなくて、実は計算されたものなの?

「そう。じゃあ、2人で遅れたりしないでね。」かなりトゲのある言い方だったと思う。私はそれだけ言って、サブトラックから出ていった。
 
 チラッと振り返っても、桐谷くんはこちらを見ている様子もなかった。

「頑張って」って言いたかったのに。

 春菜ちゃんと楽しそうにして。
 私は2人に嫉妬していた。

 私が引退しても、あの2人はまだ部活が続く。どうしよう。桐谷くんは私よりも春菜ちゃんのこと、好きになっちゃうんじゃないの?
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