きみと3秒見つめ合えたなら
 私の結果は予選落ち。厳しいのはわかっていたけど、0.06秒差だったと知ると、悔しさが込み上げてくる。
 準決勝まで0.06秒。やっぱり県大会の壁は厚かった。
 

 県大会は東高はいつもどおりの成績で、地方大会に進める者は誰もいなくて、私たち3年生も引退が決まった。
 
 帰りのバスは、春菜ちゃんを避けるように景子の横に座った。

「逃げてきたでしょ?」
「バレた?ちょっとあのテンションについて行けなくて。若い子にはついて行けないわー。」私は自虐的に言う。
 
 ピロリン...通知音が鳴る。

『先輩が遠い』

 桐谷くんの場所を確認する。
 また春菜ちゃんと通路を挟んで隣どおしに座っている。
 
 私は返信しなかった。


 バスが学校に到着した。

 毎年だが、ゴンちゃんが感極まりながら、3年生にメッセージを送る。

 入部した頃の私達の印象から始まり、思い出を語り、最後に今後の私達を激励する。
 ジーンと来ちゃうじゃん。
 景子も、もう泣いている。


「絢音、帰ろう。」
「山崎くんと帰らないの?」

「今日は、島田くんとか男同士で帰りたいんだって。カラオケ行くか!なんて盛り上がってたし。」
「そっか。」


 私は景子といつもの様に坂を下る。

「こんな風に部活のジャージ着て、景子と帰るの、今日が最後だね。」
「あー、そうだね。でもさ、時々は一緒に帰ろうよ。」

「うん。はぁ、これから受験だよー。」
「だよね。なんか心から遊べないよね。せっかく彼氏ができても恋愛してる暇もないのかなぁ。」
「そっかぁ。だよね。夏休みも3年はほぼ毎日補講だしね。」 
 
 ...そうだ。恋愛に現を抜かしている場合ではない。桐谷くんと春菜ちゃんのことを気にしていてはダメ。
 うん、明日から勉強に集中しよう。部活に集中できたんだから、できるはず。
そう、決意した。
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