きみと3秒見つめ合えたなら
「好き。桐谷くんが好き。」
 私は意を決して、うつむいていた桐谷くんの方を見て言った。

 今日言わないと、部活も引退し、もう会えないかもしれない...そう思うと伝えなくては...という気持ちが、私を素直にさせた。

 桐谷くんが顔をあげた。

 私は彼の目を見て、もう一度言った。
「桐谷くんが好き。」

 自分の声がかき消されそうなほど、私の鼓動は大きく激しく打つ。
 
 何秒、目が合っていただろうか。

 どちらともなく視線を外す。

 桐谷くんがそっと私の手を握った。

「手、繋いだこと、なかったですよね。」
 桐谷くんは緊張していたのか、敬語に戻っている。

「なのに、先にキスするとか、反則ですよね、オレ。」

「うん。」
そうだよ。反則だよ。恋におちてしまったじゃない。

「していいですか?」
「え?」

...とその瞬間、あの夜よりもっと深く愛おしそうに私を見る桐谷くんの瞳が、私の目の前にあった。

「また、誰かに見られたら...」

「していいですか?」の意味が、最初は分からなかった。だけど、きっとあの夜と同じ事が起こると確信させる桐谷くんの瞳。

「大丈夫。誰もいないから。」
と言って桐谷くんの顔が更に近くなる。

 あの夜と同じように、私は自然と目を閉じてしまう。

 そして私たちは唇を重ねた。

 辺りはもう夕暮れとなり静かで、木の葉が揺れる音と、自分の鼓動しか聞こえない。

 息が止まりそうなくらい長いキスをして、どちらからともなく、もう一度。

「あー、ヤバい。ずっと先輩とキスしてたい。」

「な、なに...」
ほぼ絶句の私。

キスなのか、今の言葉なのか、どちらが原因か分からないが、体中が熱くなる。

「先輩、受験、頑張って。」
「うん。ありがとう。」

「先輩が志望校に合格したら、深い方のキス、していい?」

 私の体温がますます上がって行くのがわかった。

「や、やだ。なに...それ。」

「合格してよ、絶対。」
< 123 / 129 >

この作品をシェア

pagetop