きみと3秒見つめ合えたなら
冗談を言った後、桐谷くんは少し真剣な顔をした。
「ヤバい。好きすぎて、どうにかなりそう。」
そう言って桐谷くんは握っていた手をそっと解き、私の頭を撫でた。
「先輩の受験の邪魔しないようにするから、今日だけ、オレのわがまま聞いて。」
その愛おしそうな彼の瞳には私が映っている。
「うん。」
私は反射的にうなずく。
すると桐谷くんは、私を撫でていた手をそのまま自分の方へ引き寄せた。私と桐谷くんの距離が縮まる。
桐谷くんは私に短いキスをした。
それは今までの、唇を重ねただけとは違うキスだった。
桐谷くんと再び見つめ合う。
それから桐谷くんは、もう一度、頭を撫でながら、きゅっと私を引き寄せて、何度も優しいキスをする。
初めて聞いたキスの音が私を甘い世界へ誘う。
「んっ」
思わず私から吐息が漏れると、誰もいない公園で、私たちは深い深いキスに身を投じた。
あ、やばっ、キスがこんなに気持ちいいものとは知らなかった。
閉じていた目をそっと開けたとき、当たり前だけど、目の前には桐谷くんがいた。
こんなに近くで顔を見るのは初めてで。結構、まつげが長いんだ..とか、そんなことを思っていた時、桐谷くんと目が合った。
びっくりして、私は思わず彼からは離れる。意外に積極的だった自分が恥ずかしくて桐谷くんの顔が見られない。
「合格したらって言ったのに。待てなかった。先輩、怒ってる?」
私は下を向いたまま、首を横にふる。
「ねぇ、先輩?」
桐谷くんの呼びかけに顔をあげる。
「先輩って本当にキス初めて?」
「な、なに?急に...桐谷くんとしたのが、初めてに決まってるじゃん。」
桐谷くんの唐突な質問にびっくりし過ぎて、そして、「キスが初めてじゃない」と思われるのもなんだかイヤで、即答してしまった。
桐谷くんが少し微笑む。
そしてちょっと意地悪な顔をして...
「すっごい上手いんだけど...」
桐谷くんがあまりにも艶っぽく言うので、言われた瞬間、体全体がかぁ〜と熱くなった。恥ずかし過ぎて、桐谷くんの顔を見ることができない。
そんな私の髪を桐谷くんは再び撫でる。
「やっぱりオレ、先輩が好き過ぎる。何年も諦めなくてよかったー。」と桐谷くんがさっきと違って無邪気に言う。
「何年って、長くて1年くらいでしょ?」
思わず顔をあげる。
「もっとだよ。オレ、中2の時、1回先輩と会ってるんだ。その時から、先輩の事はずっと心の奥にあって。ま、彼女とかいたから、信じてもらえないと思うんだけど。東高に来たのも、先輩に会えると思ったから。だから3年くらいずっと相川絢音推し。」
「全然記憶にない...」
「あたりまえだよ。だって、先輩、オレのこと知ったのって、去年の夏でしょ?春から部活にいるのに...」
「ごめん...。」苦笑い。
桐谷くんのことはただの部活の後輩、しかも名前と顔も一致しないくらいだったのに、私はいつから彼にこんなに惹かれてしまったのだろう。
少しずつ、少しずつ...そして、春合宿では自分の気持ちに嘘がつけなくなっていた。
桐谷くんは私をドキドキさせるのが上手い。ドキドキがいくつも、いくつも重なって、気がつけば、桐谷くんのことを好きになっていた。
私たちは帰るのが名残惜しく、しばらくベンチに座っていた。
こんなふうに、男の人の隣で幸せを感じられる日が来るなんて、思わなかった。
ずっと隣にいて...
心の中でつぶやいた。
「そろそろ帰ろっか。」
「そうですね。」時々、敬語になる桐谷くんもまた、かわいい。
私たちはゆっくりゆっくり、来た道をもどった。 分かれ道には思ったより早く到着してしまい、一緒にいたい気持ちを更に深くさせる。
「先輩、じゃ、また。」
「うん。またね。」
『おつかれさま』ではなくて、『またね』という響きが照れくさい。
これからはずっと『またね』が続く。
「ヤバい。好きすぎて、どうにかなりそう。」
そう言って桐谷くんは握っていた手をそっと解き、私の頭を撫でた。
「先輩の受験の邪魔しないようにするから、今日だけ、オレのわがまま聞いて。」
その愛おしそうな彼の瞳には私が映っている。
「うん。」
私は反射的にうなずく。
すると桐谷くんは、私を撫でていた手をそのまま自分の方へ引き寄せた。私と桐谷くんの距離が縮まる。
桐谷くんは私に短いキスをした。
それは今までの、唇を重ねただけとは違うキスだった。
桐谷くんと再び見つめ合う。
それから桐谷くんは、もう一度、頭を撫でながら、きゅっと私を引き寄せて、何度も優しいキスをする。
初めて聞いたキスの音が私を甘い世界へ誘う。
「んっ」
思わず私から吐息が漏れると、誰もいない公園で、私たちは深い深いキスに身を投じた。
あ、やばっ、キスがこんなに気持ちいいものとは知らなかった。
閉じていた目をそっと開けたとき、当たり前だけど、目の前には桐谷くんがいた。
こんなに近くで顔を見るのは初めてで。結構、まつげが長いんだ..とか、そんなことを思っていた時、桐谷くんと目が合った。
びっくりして、私は思わず彼からは離れる。意外に積極的だった自分が恥ずかしくて桐谷くんの顔が見られない。
「合格したらって言ったのに。待てなかった。先輩、怒ってる?」
私は下を向いたまま、首を横にふる。
「ねぇ、先輩?」
桐谷くんの呼びかけに顔をあげる。
「先輩って本当にキス初めて?」
「な、なに?急に...桐谷くんとしたのが、初めてに決まってるじゃん。」
桐谷くんの唐突な質問にびっくりし過ぎて、そして、「キスが初めてじゃない」と思われるのもなんだかイヤで、即答してしまった。
桐谷くんが少し微笑む。
そしてちょっと意地悪な顔をして...
「すっごい上手いんだけど...」
桐谷くんがあまりにも艶っぽく言うので、言われた瞬間、体全体がかぁ〜と熱くなった。恥ずかし過ぎて、桐谷くんの顔を見ることができない。
そんな私の髪を桐谷くんは再び撫でる。
「やっぱりオレ、先輩が好き過ぎる。何年も諦めなくてよかったー。」と桐谷くんがさっきと違って無邪気に言う。
「何年って、長くて1年くらいでしょ?」
思わず顔をあげる。
「もっとだよ。オレ、中2の時、1回先輩と会ってるんだ。その時から、先輩の事はずっと心の奥にあって。ま、彼女とかいたから、信じてもらえないと思うんだけど。東高に来たのも、先輩に会えると思ったから。だから3年くらいずっと相川絢音推し。」
「全然記憶にない...」
「あたりまえだよ。だって、先輩、オレのこと知ったのって、去年の夏でしょ?春から部活にいるのに...」
「ごめん...。」苦笑い。
桐谷くんのことはただの部活の後輩、しかも名前と顔も一致しないくらいだったのに、私はいつから彼にこんなに惹かれてしまったのだろう。
少しずつ、少しずつ...そして、春合宿では自分の気持ちに嘘がつけなくなっていた。
桐谷くんは私をドキドキさせるのが上手い。ドキドキがいくつも、いくつも重なって、気がつけば、桐谷くんのことを好きになっていた。
私たちは帰るのが名残惜しく、しばらくベンチに座っていた。
こんなふうに、男の人の隣で幸せを感じられる日が来るなんて、思わなかった。
ずっと隣にいて...
心の中でつぶやいた。
「そろそろ帰ろっか。」
「そうですね。」時々、敬語になる桐谷くんもまた、かわいい。
私たちはゆっくりゆっくり、来た道をもどった。 分かれ道には思ったより早く到着してしまい、一緒にいたい気持ちを更に深くさせる。
「先輩、じゃ、また。」
「うん。またね。」
『おつかれさま』ではなくて、『またね』という響きが照れくさい。
これからはずっと『またね』が続く。