きみと3秒見つめ合えたなら
「好き。桐谷くんが好き。」
 
 ほら、やっぱり答えは...
 え?違う、今、好きって言ったよな?

 オレは、顔をあげた。

 先輩がオレを見て、もう一度言った。
「桐谷くんが好き。」
 
 1秒、2秒、3秒...ほど、
 目が合っていただろうか。

 どちらともなく視線を外す。

 予想外の答えにどうしていいか分からず、抱きしめたい衝動を抑えて、先輩の手を握った。

「手、繋いだこと、なかったですよね。なのに、先にキスするとか、反則ですよね、オレ。」

「うん。」

 先輩の手は柔らかくて温かかった。もうオレは、心の衝動を抑えきれなくなってきた。

「していいですか?」
「え?」

 オレは、先輩を見つめた。
 先輩の潤んだ瞳にオレは吸い込まれそうだった。

「また、誰かに見られたら...」
何となく、先輩も察したようで...

「大丈夫。誰もいないから。」
オレは、先輩に顔を近づけた。

 ほぼ同時に瞳を閉じた。

 そして、オレたちは唇を重ねた。

 もう緊張し過ぎて、先輩に鼓動が聞こえるんじゃないか、と思うほど、ドキドキしている。

 息が止まりそうなくらい長いキスをして、どちらからともなく、もう一度。

「あー、ヤバい。ずっと先輩とキスしてたい。」
思わず本音を言ってしまった。

「な、なに...。」
先輩の顔は真っ赤になっていた。オレだって、相当顔が赤くなっているはず。

 少しして、オレはもう一つ伝えたかったことを伝える。 
「先輩、受験、頑張って。」

 先輩のことはいつも応援しているから。

「うん。ありがとう。」

 そして、オレは冗談混じりに。
「先輩が志望校に合格したら、深い方のキス、していい?」
と、聞いてみる。

「な、やだ。なに...それ。」
先輩は予想通りの照れた反応。

「合格してよ、絶対。」
オレは茶目っ気たっぷりに言った。
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