きみと3秒見つめ合えたなら
エピローグ

2人のその後

「美帆!」
卒業式を控えた2月のある休日。
私は久しぶりに美帆に会う。
受験真っ最中の私たちは、なかなか学校でも会うことがなくなっていた。

「絢音、ひさしぶり。試験、どうだった?」
 
 国公立2次試験前期日程が終わり、一時の休息。とはいえ、自信がないので、また勉強しなきゃ、なんだけど。

「うーん、どうだろう。運がよかったら?って感じかな。」

 それから美帆と他愛もない話をする。

「っていうか遅くない?」
「恭介は、部活終わってから来るって言ってたから。部活が長引いてるのかな?」

 あれから私は桐谷くんのことを恭介と呼ぶようになった。
 桐谷くんに「恭介」と呼んで欲しいと、会うたびに懇願された。
 最初はぎこちなかった「恭介」呼びも、今ではすんなり言える。
 内緒だけど、心の中ではまだ「桐谷くん」呼びが抜けない。

「ごめん、遅くなった。」

「聖斗、おっそ〜い。」

 そう、今日は実は美帆と2人で会う、というわけではなく、私と桐谷くん、美帆と早瀬くんで初めて会う。

「お、相川、ひさしぶり。元気だった?」
早瀬くんが私に気づいて、話しかける。

「なに、聖斗。絢音ばっかりー。」
「違うって。オレの一番は美帆だっていつも言ってるじゃん。」

 聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフ。こんなこと、早瀬くんが言うなんて。

「早瀬くんってこんなことを言うんだ?」
私は小声で美帆に聞く。

「なんかね、そういうのはちゃんと言わなきゃ伝わらないから...って最近、言うようになったみたい...ドキドキしちゃうよね。」
美帆は苦笑いしているが、嬉しそうに話している。

 実は美帆と早瀬くんは、付き合っている。そのいきさつはまたいずれ...。

「絢音せんぱ〜い、美帆ちゃ〜ん。」
 桐谷くんがようやく現れる。

 あんな積極的な桐谷くんなのに、私のこと、『絢音』っていうのは照れるらしく、『絢音先輩』と呼ぶ。

 私たちはいつものファミレスでランチ。

「あ〜、オレ、もう1日早く生まれたかったなぁ。そしたら、みんなと一緒に卒業できんのに。」
 桐谷くんは4月2日が誕生日。

「でもさ、恭介が同じ学年だったら、オレたち、どんな関係だったのかな?オレ、恭介とは合わなそうー。」
早瀬くんが笑いながら言う。

「聖斗くんと美帆ちゃんと小学校から同級生かぁ。絢音先輩にも、もうちょっと早く会えたのになぁ。」

「ねぇ、恭ちゃん、その絢音先輩ってやめなよー。なんか聖斗くん、美帆ちゃん、絢音先輩って、絢音がめっちゃ年上みたいじゃん。」美帆が笑いながら言った。

「確かにー。恭介、先輩つけないで言ってみ。」聖斗くんも煽る。

「いやぁ。照れるんだよなぁ。...無理。」桐谷くんは言えないの一点張り。

やっぱりこの3人のやり取りを好き。

「絢音、どうしたの?ニヤニヤして。」

「3人のやり取り、好きだなぁって。
やっぱりこの組み合わせだから、今4人で会えてるのかもね。」 

「確かに、そうかも。みんな同級生だったら、もしかしたら、私と恭ちゃんが付き合ってたりしてー。」
美帆が冗談を言う。

「美帆、恭介のこと、好きなの?違うよな?」早瀬くんが嫉妬。
 早瀬くん、美帆のこと、めっちゃ好きなんだ。

 私たちはその後、カラオケに行ったり、公園でサッカーなんかしたりして、つかの間の休日を過ごした。

「また4人で会えるかな?」
桐谷くんが不安そうに聞く。

「会えるだろ、その気になったらいつでも。」
早瀬くんがお兄ちゃんの様に答えた。
< 128 / 129 >

この作品をシェア

pagetop