きみと3秒見つめ合えたなら
 東高は駅よりなだらかな坂を登ったところにある。そこを走って行くのだから、さすがに坂道を登り切ると息が切れて、私はゆっくり教室に向かった。

「...したらいいじゃん、マサト」
「ムリだって」

 教室の前まで来て、話し声が聞こえた。
あれ?男子の声だよね。誰かまだ残ってる?ちょっと後にしようかな。

 私は男子が得意ではない...


「好きなんだろ?いいじゃん、告っちゃえよ。文化祭の準備だって、お前たちいい感じに見えたけど?」

「いい感じに見えるかー?話したこともないんだけど。一緒に作業するんだけど、ぜんぜんオレのことなんて眼中にない感じ。どこ見ていい感じに見えたんだよー。」

「え?話してないの?ま、オレも話したことないけど。なんか、雰囲気?良さそうに見えた。」

 聞こえる声はたぶん、井上匠海くんと早瀬聖斗くん。

 え?何その話?
聞いてはいけない話を聞いてしまった気がした。
それでも2人は私がいることなんて知らないから、話を続ける。

 イケないと思いつつ、2人の恋愛話が気になってそのまま盗み聞きしてしまった。

「高嶺の花っていうの?結構、かわいいって言ってるやつ多いけど、近寄りがたいっていうか。
 相川って、いつも女子同士で楽しそうにしていて、必要以上、男子と絡まないんだよな。
 もしかして、ウワサどおり年上のカレシとかいたりすんのかな?」

 一瞬、耳を疑った。

え?今、相川って言ったよね?

私?

 年上のカレシなんているわけないじゃん。
 私が高嶺の花?なわけないじゃん。
と心の中で突っ込みを入れているけど、心臓はバクバクで。

 坂道のせい...じゃなくて。

 今まで感じたことのないドキドキが体中に走り、何となく、力が入らなくて、その場に座り込みそうになった。

 確かに、早瀬くんと目が合ったことは何度かあるけど...

 え?本当に私なの?

 なんで?私?
 男子とは絡まないようにしているんだけど。

< 4 / 129 >

この作品をシェア

pagetop