きみと3秒見つめ合えたなら

〜聖斗side〜伝えられない想い

 体育祭も終わったある日、オレはサッカー部顧問の柴田に呼び出された。

 なんか、したかな、オレ...

 心当たりがないから、余計に不安になる。

「失礼します...」

 ドアを締めて顔を上げると、なぜか陸上部顧問の権田先生もいた。

 オレ、何した?
 顔が引き攣る。

「そんな引き攣った顔するなー」と柴田が言った。

「すまんな。きてもらって、早瀬。」と権田先生が言う。

「はい...」

 なんだ?益々分からなくて、気弱な返事をしてしまった。

「早瀬に頼みがある。期間限定でいいから、陸上部に来てくれないか?」

「へ?」
あまりにも唐突でびっくりした。

 それから権田先生は体育祭でのオレの走りを絶賛し、なぜオレが必要なのかを熱弁した。

 もちろん、最初は、陸上部に参加するなんて、サッカー部の事を考えたらあり得ない、と思った。

 しかし、陸上部には相川絢音がいることを思い出した。
 このままでは恭介に取られてしまう。
 チャンスじゃないか?これって。

 権田先生が永遠と熱弁しているが、そんなお世辞はどうでもいい。

 オレは陸上部に参加するともう決めていた。

「先生、そのへんで...」柴田が権田先生を止めた。

「まあ、今すぐ返事は難しいだろうから、一晩考えてくれ。」
と言って、権田先生は教室から去った。

「行くなよ。早瀬。」
柴田がオレに言った。

「行くわけないよな、早瀬。」
と、今度は柴田にサッカー部の現状を永遠と語られた。

「とりあえず、一晩考えます。」とだけ言ったが、オレの心は決まっていた。


 オレが一晩考えるのは、柴田をどう説得するかだった。



 次の日、オレはあることないこと、とりあえず盛って、柴田に陸上部の試合に出たいと熱弁した。

 最後は柴田が折れて
「サッカーに活かせるんだな?
サッカー部の練習は手を抜くな。」
と言って、陸上部の練習に参加することを許してくれた。

「ヨシっ」オレは廊下にでるとガッツポーズをした。
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